焼却炉から考える放射性廃棄物処理問題の未来

放射性廃棄物の処理は最終処分場や中間貯蔵施設、管理型処分場の建設地問題で大きな進展が見られない。現実的な手法はないか検討しています。

環境省に裏切られ続ける福島 | 未来が見えない放射性廃棄物処理問題の実態

 

一報が入った。

開閉所農林業廃棄物処理業務(減容化処理)の落札結果が公表されたとのことだ。

 

結果を見て非常に驚いた。

というよりはむしろ、これまで感じていた違和感が解消されたのである。

 

 

何故、我が国の放射性廃棄物処理が大きな進展を成し得ないのか。 

何故、福島の復興が巨額の利権ビジネスと揶揄されているのか。

何故、福島の地元住民及び県外の住民や地方自治体が、我が国全体の危機に対して非協力的なのか。

 

 

様々な立場の人、企業、自治体、行政の関係性やそれを取り扱うメディア側の微妙な距離感に非常に違和感を持っていた。

 

その答えが発表されたような気がした。

 

 

公表された結果は下記のとおり、

 

 

 

f:id:nofukushima2020:20160116184240j:plain

 

 

 

 

落札事業

三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社( 以下、MHIEC )

 

前回にも触れたPFI的手法としてのDBO方式(WTO標準型)の総合評価落札方式である。

 

 

nofukushima2020.hatenablog.com

 

 

 

 

既に理解されているとは思うが、

 

MHIECは、

技術評価点…4位(最下位)

価格評価点…1位

 

 

上記の評価に基づいた落札である。

 

 

 

MHIECは価格評価点で、2番目に低い入札価格を提示している株式会社IHI環境エンジニアリング( 以下、IKE )と2,640,000,000円( 26億4千万円 )もの価格差がある。

 

一方で、技術評価点でIKEは33.3ポイントを獲得しているため、MHIECの24.1ポイントと9.2ポイントの差がある。

 

そのため、一つの疑問が生じる。

 

仮に、26億4千万円の差が技術点9.2ポイントの差とすると、1ポイント当たり、約2億8700万円の差が生じることになる。

 

9ポイントが評価項目のどの点が反映されているかはわからないため、この表現が正確ではないかもしれないが、

 

 

MHIECはIKEの提案と比べて

 

26億4千万円分の作業を省いた

 

ことになる。

 

もちろん、企業努力でできる限りのコスト削減を行っているのかもしれない。

 

しかし、価格評価点2位のIKEと3位の株式会社神鋼環境ソリューション( 以下、KES )の入札金額の差が368,000,000円(3億6800万円)である。

 

 

この程度の差であれば、企業努力と言われてもなんとなく納得できるがさすがに26億もの開きがあると、必要なものまで削ってしまったのではないか、もしくは非常に安易な事業計画になっているのではないかと勘ぐってしまう。

 

 

ちなみに、価格評価点でこれほどの総合評価点に影響を与えるとなると、極論、日立造船株式会社( 以下、Hitz )とMHIECの2社入札であれば、MHIECは技術評価点が0点でも競合入札で落札することができたということになる。

 

 もちろん、技術点が0点だと入札資格なしと判断されてしまうだろうが。

 

 

わざわざ環境省福島環境再生事務所の公式HPに「ダンピング防止について」のPDFを公開しているにもかかわらず、26億もの差がある入札に対して環境省としてはどのような見解なのだろうか。

 

 

 

さて、以前に確認した通り、総合評価方式の技術評価点と価格評価点の配点は

 

 

技術評価点…350点満点

価格評価点…150点満点

 

上記の通りである。

 

 

150点満点はずの技術評価点の最高点が33.3点であるのは疑問だが、仮に今回の技術評価点の満点が50点であった場合、価格評価点を7分の1( 350点満点を50点満点に換算 )にして、技術評価点及び価格評価点を横並びで比較を行うと、下記の通りとなる。

 

 

f:id:nofukushima2020:20160116184043j:plain

 

 

 

価格評価点と技術評価点が同割合で評価される場合、順位が入れ替わるのである。

 

 

総合評価方式の入札では、どうしても落札したい場合、不正な行為をはたくことで落札確立を高めることができるポイントがある。

 

 

総合評価方式の入札の場合、

①技術評価( 技術提案書の評価 )

②価格評価( 金額の入札 )

 

上記の順で評価が進められる。

 

つまり、①の技術評価点が低かった場合、②の価格評価点を多くとり落札を目指すことができるのである。

 

 

「技術評価点の点数が低ければ、抜きんでた最低価格で入札せよ」

 

悪魔のささやきが聞こえそうだ。

 

 

 

よく考えてほしい。

 

技術評価点が低いということは、

 

①そもそも受託事業を運営するためのノウハウが他社と比べて少ない。(技術力の差)

②他社と比べて十分に安心・安全な運営体制を提案できていない。(作業範囲の差)

 

上記のどちらかが考えられる。

 

 

また、価格評価点抜きんでて高いということは、

 

③技術評価点で劣勢なのが分かったのちに、落札を目指してダンピングを行った。

④そもそもの提案内容の作業範囲が他社と比べて狭いため費用が安い。

 

ということが考えられる。

 

 

それぞれを、

 

①⇒③:悪質業者

①⇒④:未熟業者

②⇒③:悪質業者

②⇒④:未熟業者

 

上記のように分類できよう。

 

では、今回のケースはどうだったのか。

 

 

MHIECは技術評価点が低いとわかった時点で、それが①だったのか②だったのかは定かではないが、その後に③を選択したと考えられる。

 

 

そのため、上記分類に乗っ取ると、MHIECは悪質業者と言えよう。

 

 

 

というのも、上述のMHIECとIKEの価格評価点に対する技術評価点の1ポイント当たりの金額換算が2憶8700万円であったのに対して、IKEとKESとのそれは1億1500万円であった。

 

技術評価点1ポイント当たりのコストで2倍以上の開きがあったのだ。

 

 

 

これはMHIECに、いや今回の入札案件に限った話ではない。

 

 

総合評価方式の競合入札案件において、技術評価点が他社と比べて離れている場合、その時点で入札資格を排除しないと、具体的には、技術評価点が最下位の事業者は価格評価点を獲得しえないようにするといった対策を講じないと、このような事態が頻発するのではないだろうか。

 

 

以前指摘したように、放射性廃棄物の減容化事業をめぐる入札方法はこれまでを踏襲したPFIの基本理念に即した入札方式には馴染まない。

 

 

何故なら、こうした安かろう、悪かろうがあってはいけないからだ。

 

 

 

確かに、これまでのルールを根本から変えることは難しいかもしれない。

 

 

しかし、このままでは、誰一人として我が国の放射性廃棄物処理の問題に対して真剣に検討し、協力しようともしないだろう。

 

何故なら住民の安心・安全のための事業者選定のシステムが破たんしているのに、そのシステムを利用する環境省が真剣に構造改革を実施しようとしていないからだ。

 

このままでは、2020年の東京オリンピックどころではない。

福島の復興、我が国の未来はお先真っ暗である。

 

 

 

では、どうしたらよいのか。

 

これまで半年以上にわたって焼却炉及び減容化施設といった少し斜めから福島の復興に向けた取り組みに対して独自に情報収集を行ってきた、私なりの一つの結論を出したいと思う。

 

 

①入札参加資格の基準の見直し

・過去10年以内に提案内容と同一焼却炉形式での竣工及び運用実績がある企業のみ入札資格を得る。

・過去5年以内に減容化施設運営に関連して事故を起こした企業は入札資格を得ない。

・過去5年以内に工期の度重なる遅れを生じさせた企業は入札参加資格を得ない。

 

 

②入札方式の見直し

・総合評価方式の技術評価点と価格評価点の配分を同等にする。

・競合入札の際に技術評価点が最下位の業者は価格評価へ進めないようにする。

 

 

更に加えて、地元住民及び自治体から100人を匿名のまま無作為に選定して、応札業者に対する人気投票を行ってはいかがだろうか。

 

そのポイントを1人1点の100点満点で加点とし、

 

技術評価点+価格評価点+地元評価点

 

上記の合計で総合評価を行う。

 

これを

 

復興特別総合評価方式

 

 とでも名づけよう。

 

 

このような評価に基づいて実際の提案実施内容や事業者が選定されれば、地元住民も自治体も環境省が選定したのではなく、自分たちが選んだ受託事業の内容、受託事事業者として認識し、より多くの協力が得られるのではないかと考える。

 

 

そして、従前のPPPの事業方式の1つであるDBO方式の枠を超えて、官+民+地元の協力事業方式へと変容させることが求められる。

 

ついでにこちらは、

 

Co-DBO方式

 

としたい。

 

 

 

 

いま変化をもたらさなければ、もう放射性廃棄物処理に未来はない。

 

そんなことはわかっているのに、主張しているのに、変わらない。

 

こんな時に、今更ながらマスメディアの力の強さを再確認する。

 

灯台下暗しとはよく言ったものだが、灯台はいつまで立っても自分の足元は照らせないのである。

 

だから今後もこうした形で情報を発信を続けていきたい。

 

 

フレコンバッグが先か、減容化が先か、それは大問題だ

 

 

年末年始の多忙な時期を何とか乗り越え段落したところで、久々に環境省放射性廃棄物汚染処理情報サイトを確認すると、なんと12月25日に“福島県関連の最新情報”がトップページ公表されていた。

 

飯館村蕨平地区の減容化施設の件か。

 

いや、それとも12月10日に落札予定だった開閉所農林業系廃棄物の減容化処理の入札結果か。

 

 

nofukushima2020.hatenablog.com

 

 

 

タイトルには

 

「国直轄による福島県における災害廃棄物等の処理進捗状況」

 

とある。

 

 

ページを開くとそこには、286KBのPDFがUPされていた。

 

 

 

なんとそこには、これまでのフォーマットよろしく、進捗状況に関連した内容が公開されていた。

 

残念。

 

 

ただただ事実を積み重ねた“国直轄による福島県(対策地域内)における災害廃棄物等の処理進捗状況”と題した1ページ目のスライド。

 

 

「国直轄による福島県における仮置場と仮設焼却施設の設置状況(平成27年12月25日現在)」と題したこれまたこれまで通りの資料のアップデートを行ったスライド。

 

 

 

いや、

 

 

またあった。

 

 

ここにも相変わらず、「事実」が公表されていた。

 

 

飯館村蕨平の減容化処理施設の進捗状況が

 

処理対象物搬入中(平成28年1月より稼働予定)

 

と記載されている。

 

 

確か、12月中旬に最低でも1基は稼働を開始する予定だったはずだが、やはり遅れている模様だ。

火入れ式を行う発表は行っても、稼働が遅れる発表を行わないのはさすがといったところであろうか。

 

 

飯館村蕨平の工期が遅れているのではないかといったことは既に何度も取り上げてきたが、ここにきて開閉所農林業系廃棄物の減容化処理事業が遅れるとなると困ったことがある。

 

 

それは、現在、仮置き場や住宅の近隣に置かれている焼却対象物。

 

つまり、これから減容化処理施設に収集搬入され、焼却炉に投入される放射性廃棄物である。

 

 

何が問題か。

 

 

これまでも触れてきたが、放射性を帯びた指定廃棄物はフレコンバック(フレキシブルコンテナバッグ)と呼ばれる袋に入れられて保管されている。

 

 

もう少し丁寧に確認をすると、フレコンバッグに入れられて保管されている指定廃棄物は、

 

①減容化後に中間貯蔵施設建設が間に合わずに仮置き場に置かれている

②減容化以前から100,000 Bq / kgを超えていて仮置き場に置かれている

③住宅の近隣や道路脇、農地にまとめて放置されている

 

上記3つの状態に分けることができる。

 

 

また、

 

①②は管理されている仮置き場に置かれているため、③と比べると保管状態が良いと考えられる。

 

 

 

その点に関しては、環境省が取材に対して回答を行っている。

誤解が生じると困るため、全文を引用させていただく。

 

 

“耐用年数超えた除染袋「直ちに問題は起きない」 環境省

 除染で出た汚染土などが詰まった袋(フレコンバッグ)が耐用年数をこえて使用されることについて、福島環境再生事務所の関谷毅史所長は12日、「巡回などふだんの管理の中で確認し、問題があれば現場で対応していくことに尽きる」と述べた。袋の詰め替えなどの抜本対策は当面必要ないとの考えを示したものだ。

 

 福島県川内村であった汚染土などの仮置き場に関する住民説明会の後、朝日新聞などへの取材に語った。

 

 汚染土などの保管をめぐり、環境省は当初、3年をめどに中間貯蔵施設に運ぶと表明し、屋外での想定耐用年数が3年の袋も多く使っている。だが村内には、すでに保管が3年をこえた仮置き場もある。運搬先の中間貯蔵施設の建設の遅れから、保管中に耐用年数をこえるおそれがあるため、周辺住民らからは「袋が傷んで汚染土が外に漏れ出さないか」といった不安が出ている。その点について、関谷所長は「フレコンバッグの耐用年数は最低3年間だが、これは日光を直接当てた想定だ。実際には袋の上にシートをかぶせ、日光が当たらないようにしている。3年が経ったから直ちに問題が起きるとは思わない」と述べた。そのうえで「現時点で管理の方法を変える必要はない」とし、すでに取り組んでいる定期点検や災害時の巡回などで対応できるとの考えを示した。”

 

 

 

www.asahi.com

 

 

 

これはどうゆうことか。

 

フレコンバックの耐用年数が切れて本来の役割が果たせなくなるといったことであろうか。

 

 

 

 

理解を促進するためにフレコンバッグについて調べてみた。

 

フレキシブルコンテナとは、日本フレキシブルコンテナ工業会によると、

 

“ フレキシブルコンテナは、粉粒体を大量輸送することを目的に、折り畳みができる柔軟性の材料を用いて袋状に造られ、吊り上げるためのつり部と、注入・排出ができる開口部を備えたコンテナ(充填荷重が0.5トン~3トン)”

 

のことを言うらしい。

 

また、平成25年5月の環境省廃棄物関係ガイドライン第2版によると、

 

“フレキシブルコンテナの種類としてランニング形とクロス形がある(JIS Z 1651による。この他、JIS 適合確認されていない土のうに類するバッグも市販されている。”

 

 

と、フレコンバッグの種類が多くあることを認識したうえで、

 

 

“使用にあたっては、保管の条件に適していることを確認した上で選択する必要がある)。” 

 

 

 

そのため、

 

“保管が一定の期間にわたる場合や、水分を多く含む廃棄物や比較的重量のある廃棄物については、クロス形を二重にすることやランニング形等の耐久性の高いものを用いることが望ましい。また、風雨や紫外線にさらされる屋外等で保管する場合には、UV加工のクロス形やランニング形等、耐候性に優れたものを選択することが望ましい。”

 

 

 

としたうえで、“耐候性(紫外線)等について”の表記において

 

 

“フレキシブルコンテナは JIS Z 1651 で定義されており、クロス形、ランニング形等の種類がある。”

 

 

 

JISの定義を再確認し、

 

 

“例えば、日本フレキシブルコンテナ工業会の自主規格においては、900 時間の耐候性試験を行い、初期強度の 70%を維持していることを確認するなどしており、3年程度の保管後においても、重機による収集・運搬等に耐えうるように設計されている。”

 

このように、フレコンバックは概ね3年間の耐用年数のものを使用してきたのである。

※記載内容は平成25年5月の“除染関係ガイドライン”第2版による。

 

 

余談だが、前出のガイドラインは平成23年12月に第1版が公表されているが、その中ではフレコンバッグの耐候性が保持される年数を

 

“JIS によるランニング型はゴムや塩ビ製であり、5~7 年の耐候性がある。一方、JISによるクロス型はポリプロピレン製であり、上記の耐候性は期待できない。”

 

 

と、少なくとも5年はあると断定していた。

しかし、その1年半後の第2版では3年と表現を変更した。

 

そもそも放射性廃棄物を保管するためのフレコンバッグなど日本にはなかったはずだし、その前提条件をよそに、

 

“5~7年の耐候性がある”

 

と断定したことは、明らかな間違いであった。

 

 

 

 

話を本題に戻すと、

 

新年を迎え、今年の3月であれからもう5年になる。

 

事故発生当時からすぐにフレコンバックに廃棄物を保管していたわけはないが、環境省が公表している“国直轄による福島県における災害廃棄物等の処理進捗状況”から、

 

平成27年11月の時点で、災害廃棄物等の合計は約80万トンと推定されている。

 

・仮置き場への搬入済量が65万トン(平成26年11月は25万トン)

・減容化処理済量が16.5万トン(そのうち指定廃棄物の処理済量は6.8万トン)

 

これまでのところ、帰還の妨げとなる廃棄物の撤去と仮置場への搬入を優先しているため、単純には言えないが、約40%が指定廃棄物であり、全体で少なくとも約32万トンが指定廃棄物となる。

 

また、平成26年3月までに約34万トンの災害廃棄物が仮置場に搬入されており、そのうちの40%の13.6万トンが指定廃棄物だった場合、現在、6.8万トンの指定廃棄物がガイドライン制定後の平成23年12月から26年3月までの間にフレキシブルコンテナバッグに詰め込まれた廃棄物だと考えられる。

 

つまり、第2版で想定されていた耐候性が守られる3年が既に過ぎているとフレコンバッグ存在することも大いに考えられる。

 

 

さて、先ほどの環境省の見解に戻る。

 

www.asahi.com

 

 

 

 

記事の中で環境省の関谷所長は“3年が経ったから直ちに問題が起きるとは思わない”と回答している。

 

的を得ている。

 

環境省ガイドラインで公表している耐候性の3年の根拠はどこにもない。

そもそも放射性廃棄物を保管・運搬するために作られたフレコンバッグなどその当時に、いや今もかもしれないが、存在しないのである。

 

つまり「3年」が経ったからと言って直ちに何かが起こるのではなく、もう既に起きているかもしれないし、明日何か起こるかもしれないという、未知の経験を誰も予測できないのである。

 

 

但し、確かにJIS基準のお墨付きを頂かなくても、もどんなフレコンバッグも使っていれば耐候性は低下し、やがて使えなくなることは間違いない。

 

 

その中で、廃棄物の仮置場への搬入は続き、一刻も早い減容化処理が求められる。

 

 

しかしながら、減容化処理事業は進まない。

 

 

 

飯館村蕨平の減容化施設は未だ稼働せず、開閉所農林業廃棄物処理施設の入札結果は未だ公表されない。

 

 

フレコンバッグの耐候性がなくなり、再度放射性物質が周囲に飛散もしくは地下水に浸透するのが先か、それとも減容化処理施設が順調に完成してフレコンバッグが焼却炉に投入されるのが先か。

 

 

 

何を恐れているのだろうか。

 

 

もっとオープンに議論すればよいのではないか。

 

 

2016年1月は今後の我が国の放射性廃棄物処理問題の行く末を占う、非常に重要な月になりそうだ。

 

 

 

減容化事業の入札結果や運用情報 | 隠される真実

 

12月10日(木)に入札されたはずの開閉所農林業系廃棄物の減容化処理施設の受託事業はどの事業者が入札したのだろうか。

 

結果が表に出てこないので、気になる。

 

何故入札結果等の情報は一般に当然のように開示されることがなく、一般国民が強く情報取得の意思表示を行わないといけないものなのであろうか。

 

確かに何か予期せぬ事態が発生し、詳細を即時開示することができなくなった場合を想定すると、情報の統制は重要な点かもしれない。

 

しかし、これまでの一連の減容化施設での事故や地域住民とのトラブルの実態を鑑みると、行政としてはできる限り対外的に適切な情報開示をタイムリーに行うことが求められるのではないか。

 

 

具体的には、

 

なぜその事業者に事業を委託したのか

 

を明確にすべきだ。

 

総合評価方式に基づく技術提案書と入札価格の総合点で評価されることは理解しているが、その点数の結果や事業者選定における妥当性は関係者全員が納得することはないかもしれないが、地元住民の多くが納得できるような内容で公表すべきだと言える。

 

nofukushima2020.hatenablog.com

 

 

 

さて、11月25日(水)にこれまで工期が遅れていた飯館村蕨平対策地域内の減容化施設の「火入れ式」が行われた。

 

 

実に当初予定されていた、運転開始時期から平成26年度末から8カ月遅れている。また、現在の段階は「火入れ式」といった、実際の運転ではない。

 

 

 

実際の運転開始時期は12月の中旬ということで来週あたりには運転開始の報道があるのであろうか。

 

www.minpo.jp

 

 

 

さらっとこうした報道記事を流し読みしてはいけない。

下記の河北新報の記事を注意深く読んで頂きたい。

 

 

 

<仮設焼却施設>飯舘村外の指定廃も処理

 

12月中旬に稼働する仮設焼却施設

 東京電力福島第1原発事故で全村避難する福島県飯舘村の蕨平地区に、除染廃棄物などを減容化する仮設焼却施設が建設され、25日、現地で火入れ式があった。放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8000ベクレルを超える指定廃棄物も村外から受け入れる初の施設。来月中旬に処理を始める。処理量は1日240トン。来年3月にフル稼働する予定。総事業費は約414億円。

 施設は村内の除染廃棄物や家屋の解体ごみに加え、福島市伊達市南相馬市、川俣町、国見町の5市町で発生した稲わらや堆肥などの農林業系廃棄物と下水汚泥を焼却。廃棄物の容積は5%程度に縮小される。

 環境省は当初、3年間で計21万トンの処理を想定した。除染が進んで対象物が36万トンに増えたため、2年間の契約延長に向けて村と調整している。

 火入れ式には関係者ら約100人が出席。菅野典雄村長は「6000人の村民を受け入れてもらっている周辺自治体の廃棄物も一緒に処理する。前向きに力を合わせて、村を再生させたい」と述べた。

 同村では、村内の家屋片付けごみなどを処理する仮設焼却施設が昨年8月、小宮地区に完成している。

 

 

www.kahoku.co.jp

 

 

どこに注目すべきかというと、

 

 

“来月中旬に処理を始める。”

 

2015年12月中旬に処理を始めるとのこと。

 

 

 

“処理量は1日240トン。”

 

処理量は1日240トンもあることがわかる。

 

 

 

“来年3月にフル稼働する予定。”

 

 

2016年3月にフル稼働することも分かった。

 

 

 

 

 

いやいや、これはいったいどういうことか。

 

 

環境省の発表資料に基づくと、飯館村蕨平の減容化処理施設の処理能力は、

 

処理能力:240トン/日(120トン×2炉)

 

上記の通り。

 

飯舘村蕨平地区仮設焼却施設の火入れ式について(お知らせ)[福島環境再生事務所]:環境省

 

 

 

その処理が実行されるのが来年の3月ということは、それまでは24時間運転を行わず、周辺住民に配慮でもするというのであろうか。

 

 

何かの引っ掛かりがあったため、同上URL内にある環境省の報道発表資料の「資料1:飯舘村蕨平地区対策地域内廃棄物等処理業務(減容化処理)」の図をよく見てみる。

 

すると、なんと、平成27年度3月まで現在の建設工事が続けられることになっている。

 

 

 

つまるところ、

 

飯館村蕨平の減容化施設は完成していない

 

のである。

 

 

火入れ式とは名ばかりで、

 

いや、見方によっては正しいのかもしれないが、

 

建設予定の2炉の内、1炉の完成に伴う「火入れ式」なのだ。

 

 

つまり、平成27年度3月( 2016年3月 )までは1炉で処理が行われるため、120トン/日の処理能力しか持たないことになる。

 

 

ということは「平成25年度飯舘村蕨平地区対策地域内廃棄物等処理業務(減容化処理)」の減容化施設の完成は当初予定よりも12ヶ月遅れることになるのだ。

※もしかしたら、年度をまたいで平成28年度に完成の可能性も十分に在り得る。

 

 

しばしばあることだが、行政側から情報発信に際して内容の規制や表現方法の指導があると、事実は伝えているのだが、どうしても真実を伝えることができないケースがある。

 

 

周知の事実かもしれないが、マスメディアの情報発信には限界がある。

 

 

ただし、国・行政は開示する情報に関して「嘘」はつけない。

 

 

報道内容そのものではなく、報道内容の情報ソースをしっかりと確認することで、真実を探ることが必要だ。

 

 

繰り返しにはなるが、

 

何のための減容化施設建設なのか

 

をしっかりと考えなおし、より安心・安全な運用を行うことを目指し、情報開示を進めていくことを期待したい。

 

 

 

さて果たして、2016年2月頃には2炉目の火入れ式の報道発表が出るのだろうか。

  

 

 

開閉所農林業系廃棄物処理業務( 減容化処理 )の入札公告に関連して

 

 

10月21日(水)新たな減容化処理施設の入札公告が行われた。

開閉所農林業系廃棄物処理業務(減容化処理)の発注について(お知らせ)[福島環境再生事務所]:環境省

入札公告のタイトル通り、“農林業系廃棄物”の処理を行うための施設の様である。

 

 

概要には

 

 

“島県内においては放射性物質に汚染された農林業系廃棄物が大量に発生しており、早急に減容化処理に取り組むこと”

 

 

が課題として挙げられ、

 

 

田村市川内村にまたがる東京電力株式会社南いわき開閉所敷地内の一部に1日の処理能力60トン程度の仮設焼却施設を建設し、県内24市町村内の農林業系廃棄物を焼却処理して減容化する”

 

 

ことが事業の内容と説明がある。

 

 

また、タイトル通り、処理対象物は「稲わら、牧草、牛ふん堆肥、ほだ木・きのこ原木等」とされており、これまでの減容化処理における焼却炉の炉形式でいうと流動床式の焼却炉が適していると言える。

 

 

 

これまでにも、農林業系廃棄物の処理は課題として挙げられていたが、概要に記載するにとどまり、実証事業以外で環境省直轄の事業名に『農林業系廃棄物』が明記されたのは初めてではないだろうか。

 

 

林業系廃棄物の処理といえば、以前に書いた鮫川村の減容化実証事業があげられる。

nofukushima2020.hatenablog.com

 

前回も指摘した通り、日立造船が事故を引き起こした仮設焼却炉だが、今度こそ事故のない安心・安全な施設の施工・運営を行う会社を選択したいところだ。

 

 

また、環境省が課題として認識している通り、早急に減容化処理に取り組まなくてはいけないといった観点では、工期を含めて滞りなく施工・運営が行えることも重要な点ではないだろうか。

 

 

例えば、現在建設中の飯館村蕨平地区の減容化処理事業では、2013年12月16日に公告が行われた際の予定では、仮設焼却炉の運転開始は平成26年度末を予定していた。

 

http://www.vill.iitate.fukushima.jp/saigai/wp-content/uploads/2013/06/24b61e814a407fdaa729a76c651ef104.pdf

 

 

 

しかし、その後の公表資料では、平成27年秋頃目途に運転が開始される予定と変更されている。

http://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_fukushima/pdf/06_01_01.pdf

 

 

 

もうそろそろ11月に入るが、未だ運転開始の情報は出ていない。

実際にはどうなっているのか。

 

 

事業を受託したのは、

 

■仮設焼却炉:IHI環境エンジニアリング、日揮熊谷組

 

■仮設資材化施設:日揮太平洋セメント、太平洋エンジニアリング、日本下水道事業団農業・食品産業技術総合研究機構国際農林水産業研究センター

 

 

上記の企業群だ。

 

 

これまでの減容化施設の受託事業IHI環境エンジニアリングの名前が出てきたのは初めてであるが、これまでの実績はどのようなものであろうか。

 

 

WEB上から情報を収集しようとしても、最近の新規施工の実績が拾えず、焼却施設の運営委託を複数の自治体で受託しているようである。

 

 

減容化事業を急いでいるのならば、予定通りの工期で滞りなく建設を行う企業に委託したいものである。

 

 

 

放射性廃棄物の減容化事業はPFIの基本理念と馴染むのか?

 

前回、福島県の減容化処理施設の競争参加資格について書いたが、( 仮設焼却炉の受託事業 | 競争参加資格における施工実績の期限 - 焼却炉から考える放射性廃棄物処理問題の未来 )そもそも一連の減容化施設の建設に関してどのような入札方式をとっているのか。

 

国・地方自治体が減容化施設等の所謂「はこもの」を民間企業が受託する場合、PFI( Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ )の制度を用いるケースが多い。

 

内閣府のHP( http://www8.cao.go.jp/pfi/aboutpfi.html )によるとPFIとは、

 

“公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用”

 

することにより、

 

“国や地方公共団体等が直接実施するよりも効率的かつ効果的に公共サービスを提供できる事業

 

を対象として、

 

“国や地方公共団体事業コストの削減、より質の高い公共サービスの提供を目指します”

 

上記が目的とされている。

また、その根拠として、

 

 

“英国など海外では、既にPFI方式による公共サービスの提供が実施されており、有料橋、鉄道、病院、学校などの公共施設等の整備等、再開発などの分野で成果を収めています。”

 

 

欧米での実績を取り上げている。

我が国においては、平成11年7月に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」( 索引検索結果画面 )が成立し、平成12年3月に「基本方針」が民間資金等活用事業推進委員会(PFI委員会)の審議を経て内閣総理大臣によって策定され、PFIの枠組みが設けられた。

 

 

ただPFIと一言にいってもその事業委託方式にはいくつか方式が存在する。

PFIとはPPP( Public-Private Partnership :公民( 官民 )連携)の手法の一つであり、民間の資金を活用して公共事業を行ったら効率いいんじゃない?といった発想である。

 

 

因みに、こうした一連の事業の民間委託及び、行政機能の民営化は、ケインズ経済学台頭後の膨大化した政府支出を少しでも縮小するために行われた1980年代のイギリスのサッチャリズムに端を発するリベラリズムの再興として新自由主義的な政策であり、アメリカではレーガノミクス、日本では中曽根内閣の臨調路線がその流れに同調した。

 

 

さて、話を戻すとPFI事業方式には下記の方式がある。

 

 

① BTO( Build Transfer Operate )方式

民間事業者が施設等を新たに建設し、施設完成直後に公共施設等の管理者等に所有権を移転し、民間事業者が維持・管理及び運営を行う事業方式のこと。

 

② BOT( Build Operate Transfer )方式

民間事業者が施設等を新たに建設し、維持・管理及び運営し、事業終了後に公共施設等の管理者等に施設の所有権を移転する事業方式のこと。

 

③ BOO( Build Own Operate )方式

民間事業者が施設等を新たに建設し、維持・管理及び運営し、事業終了時点で民間事業者が施設を解体・撤去する等の事業方式のこと。

 

④ RO( Rehabilitate Operate )方式

既存の施設を改修し、管理・運営する事業方式のことで、既存の所有者からの所有権移転はなく、地方公共団体が所有者となる方式のこと。

 

( http://www8.cao.go.jp/pfi/tebiki/index.html )

 

 

 

また、上記以外にPFIと類似したPPPの一つとして

 

 

⑤ DBO( Design Build Operate )方式

公共が資金調達を負担し、設計・建設、運営を民間に委託する方式のことで、民間の提供するサービスに応じて地方公共団体が費用負担する事業方式のこと。

 

このDBO方式は政府の策定したPFI法( 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 )には基づかない方式のため、各地方公共団体及び官公庁は「PFI的手法」との表現を用いている。

 

 

総務省地域力創造グループ地域振興室が平成24年12月に公表した「地方公共団体によるPFI事業とPFI法に関する調査」の調査報告書によると、

 

 

地方公共団体へのアンケートでは、「必ずしもPFI法に基づかない」PFI事業を実

施している 29 団体のうち、19 団体がこのDBO方式を念頭に置いて回答している。”

 

 

としたうえで、DBO方式のメリットとして

 

補助金交付金、起債という地方公共団体に認められた資金調達手段の活用と、設計・建設・維持管理・運営を包括的に単一の企業グループに委ねることで事業費の効率化を図るというPFI手法のメリットの活用を両立できるという点が挙げられる。”

 

としている。

また、

 

“包括的に企業グループに委ねることで、維持管理・運営を意識した設計・建設が可能

になり、総事業費の圧縮などの事業効率化が進むと共に、事務コストの軽減につながる

と認識されている。”

 

 

とし、PFI方式の評価におけるVFM( Value For Money )観点から事業費が最小化されるとの認識である。

 

さて、

ここまでPFIについて確認してきたが、本題はここからである。

 

福島県放射性廃棄物の処理事業PFI( PPP )の基本理念と馴染むのか。

 

といった疑問である。

 

 

つまり、事業費を縮小することを目的として、運用効率を向上させることでできる限り予算を削減することが目的の方式で事業者及びその減容化手法を選定するべきなのであろうか。

 

VFMといった単語が前出したが内閣府の説明によると、

 

“VFMはPFI事業における最も重要な概念の一つで、支払い(Money)に対して最も価値の高いサービス(Value)を供給するという考え方のことです。従来の方式と比べてPFIの方が総事業費をどれだけ削減できるかを示す割合”

 

上記の通りとしている。

 

要するに、ある一定の公共事業費の入札価格に対して、また要求水準書の内容に対して、一番安い金額提示をしてきた事業者の評価が一番高くなる。

 

もちろん事業者の技術提案書の内容が素晴らしければその分総合評価方式では高得点が期待できるが、福島の将来を考えたよりよい技術提案をしている事業者の価格がその分高いために落札できなくなったらどうするのだろうか。

 

 

環境省東北地方環境さ事務所福島環境再生事務所が公表した、平成25年度飯館村蕨平地区対策地域内廃棄物等処理業務(減容化処理)に関する入札説明書を見てみると、

 

入札方法において

 

“本 業 務 は 、 入 札 時 に 業 務 計 画 等 の 技 術 提 案 を 受 け 付 け 、 価 格 以 外 の 要 素と価格を総合的に評価して落札者を決定する総合評価落札方式(WTO標準型)の業務である。なお、本業務は、資料の提出、入札等を紙入札で行う対象業務である。”

 

上述の通り総合評価落札方式での入札としている。

そのうち評点の配点は

 

・総合評価点(技術評価点と価格評価点の合計)…500点

  ・技術評価点…150点

  ・価格評価点…350点

 

である。

 

http://tohoku.env.go.jp/procure/2013/pdf/20131216/1216aa.pdf

 

 

入札説明書を確認すると、価格評価点は、技術評価点のなんと2倍以上である。

 

 

確かに途方もない膨大な費用を湯水のごとく流し続けることは我が国の財政を鑑みると問題視すべきことである。

 

しかし、地域住民の安心安全を確保するために、また将来的な不安を福島に残さないためには、価格評価点の比重を高めるべきではないと考える。

 

 

 

重要視されるべきは、選定した事業者が設計・建設・運用する施設が、

 

放射性廃棄物処理の事業そのものが中長期的な日本の将来にとってプラスになるのか

 

また、

 

地域住民に対して更なる不安・不信を与えるものではないのか

 

 

この2つを軸に事業者選定を行っていくべきではないか。

 

 

 

現に引き合いに出した平成25年12月16日公告の飯館村蕨平の減容化施設は当初福島県飯舘村の公表資料では

 

・平成25年度末までに…仮設焼却炉/仮設資材化施設の事業着手

・平成26年度末目途…仮設焼却炉運転/仮設資材化実証事業開始

・3年程度で処理/実証完了を目指す

・その後速やかに、撤去・原状回復

 

( http://www.vill.iitate.fukushima.jp/saigai/wp-content/uploads/2013/06/24b61e814a407fdaa729a76c651ef104.pdf )

 

上記のスケジュールが公表されていた。

 

しかし、その後環境省が平成26年11月6日に公表した資料では、

 

・平成25年度末までに…仮設焼却炉/仮設資材化施設の事業着手

平成27年度秋頃目途…仮設焼却炉運転/仮設資材化実証事業開始

・3年程度で処理/実証完了を目指す

・その後速やかに、撤去・原状回復

 

http://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_fukushima/pdf/06_01_01.pdf )

 

と変更されている。

 

実際にどういったやり取りが行われていたのかは確認のしようがないが、半年以上の遅れを既に予定工期(平成26年度末)の数か月前から公表するということは非常に不自然と言わざるを得ない。

 

“※処理対象物の量の精査や設計の結果などにより、スケジュールの変更があり得ます。”

 

と説明をしているが、果たして真実はどこにあるのか。

 

 

中間貯蔵施設や、最終処分場の建設が後手に回る中、また、一時保管しているフレコンバックの耐用年数が限界を迎えている中、一日でも早く適切に、また、安心安全な放射性廃棄物処理が進んでいくことを願う。

 

 

仮設焼却炉の受託事業 | 競争参加資格における施工実績の期限

 

 

これまでの入札公告資料をざっと目を通すと、気になる基準が設けられている。

 

競争参加資格に明記されている

 

“平成○○年度以降に、本業務で提案する仮説焼却炉と同程度の規模(1炉当たり○○○トン/日)廃棄物の処理及び清掃に関する法律第8条第1項に掲げる施設のうち、同法施行令第5条第1項に掲げる焼却施設。以下同様。)を元請けとして自ら設計し、施工した実績を有すること。”

 

また、その中にある施工実績とは、

 

“施工実績は、平成○○年度4月1日から本工事に係る提案書等の提出期限までの間に工事が完成し引渡しが済んでいるものに限るものとする。”

 

上記の文言である。

 

 

確かにこれまでに施工実績の無い、プラントメーカーやゼネコンが元請となって福島復興のための事業を行い、万が一の事故が発生するリスクを低減するためには、こうした業者の絞り込みは重要な点だといえる。

 

 

しかし、よく調べてみると、環境省が開示している入札説明書では不可解な数字になっている。

 

 

例えば、

 

・平成25年度飯舘村蕨平地区対策地域内廃棄物等処理業務(減容化処理)

施工実績:平成13年度以降…12年前までOK

http://tohoku.env.go.jp/procure/2013/pdf/20131216/1216aa.pdf

 

 

・平成 26 年度南相馬市災害廃棄物代行処理業務(減容化処理)

施工実績:平成13年度以降…13年前までOK

http://tohoku.env.go.jp/procure/2014/pdf/20141118/1118aa.pdf

 

 

・平成 27 年度楢葉町対策地域内廃棄物処理業務(減容化処理)

施工実績:平成13年度以降…14年前までOK

http://tohoku.env.go.jp/fukushima/procure/2015/06/30/upload/01_1000062667.pdf

 

 

1年経つにつれて、その競争参加基準を引き上げるわけでもなく、そのまま前例を踏襲している。

 

役所らしいといえば役所らしいのではあるが、これでは折角の競争参加資格の焼却炉運用事例の乏しい、もしくは焼却炉技術が陳腐化している企業の参加を排除できないのではないか。

 

 

焼却炉の入札案件に限らず、概して、過去の技術を利用して施工を提案する企業は見積もりが低く受注しやすいのであるが、その後の運用に事故がつきもので、予定通りに事が進まないものである。

 

 

 

また、環境省の“廃棄物処理施設長寿命化総合計画作成の手引き(ごみ焼却施設編)平成27年3月改訂”によると、

http://www.env.go.jp/recycle/waste/3r_network/7_misc/gl-ple_prov.pdf

 

廃棄物処理施設は、廃棄物の適正処理を前提として、地域における循環型社会の形成の推進や災害対策等の拠点となるインフラとしての役割が期待されています。廃棄物処理施設整備計画(平成 25 年5月閣議決定)においても、廃棄物処理施設は、3R の推進、省エネ・創エネの促進、災害対策の強化等、様々な機能・役割が求められているところです。これらの機能について、技術革新の早い分野については、早い更新が望まれる一方、高額な技術や設備の導入には予算制約があるため、一方で既存施設の長寿命化を図りながら、両者をバランスよく進めていく必要があります。さらに、今後、新設から解体までの、いわゆるライフサイクルの延長のための対策という狭義の長寿命化の取組に留まらず、更新を含め、将来にわたって必要なインフラの機能を発揮し続けるための取組を実行することにより、これまで進めてきた廃棄物処理の継続的な発展につなげていくことが重要です。

 

 

 

とし、技術革新の早い分野があることを認識しつつ、総論の用語の定義の中で、

 

 

(5)基幹的設備改良(基幹改良)事業

燃焼(溶融)設備、燃焼ガス冷却設備、排ガス処理設備など、ごみ焼却施設を構成する重要な設備や機器について、概ね10~15年ごとに実施する大規模な改良事業。循環型社会形成推進交付金の交付対象となる事業には、単なる延命化だけでなく、省エネや発電能力の向上などCO2削減に資する機能向上が求められる。 

 

 

上記の通り、ごみ焼却施設を構成する重要な設備や機器について、概ね10~15年程度で大規模な改良事業が必要であると指摘している。

 

 

また、“6.廃棄物処理施設のストックマネジメント”では、

 

 

(3)廃棄物処理施設における延命化計画

ごみ焼却施設の耐用年数はこれまでは一般的に 20 年程度とされてきたが、建物についてみれば 50 年程度の耐用年数を備えており、また、ごみ焼却施設に設置される各種の設備・機器については、20 年程度経過してもなお、受変電設備、発電設備を始めとして高い健全度を保っている設備・機器等、部分的な補修で健全度を回復することが可能なものも多い。

廃棄物処理施設内の設備・機器の維持管理を適切に行ったうえで、耐用年数の比較的短い重要設備を適切な時期に更新する等の対策を行うことにより、廃棄物処理施設全体の耐用年数の延長を図ることは、ひっ迫する地方自治体の財政に対して効果的であると同時に、資源・エネルギーの保全及び地球温暖化対策の観点からも強く望まれる。

効果的な基幹的設備の更新を含む長寿命化総合計画のイメージを図 I-5~7 に示す。

 

①性能水準の変化

ア 従来

廃棄物処理施設全体の性能水準は、竣工後、稼働時間を経るとともに腐食、摩耗、閉塞等により劣化が生じ、焼却能力や公害防止性能を維持しつつも、耐久性の低下、設備・機器の陳腐化等により徐々に低下する。

性能水準は、定期点検補修等において、腐食、損耗の大きい箇所・部品を中心に局部的な補修・交換を行うことにより低下防止が図られ、稼働後 12、13 年程度は低下が軽微である。しかし、経過年数がそれ以上に進むに従って、腐食、摩耗等の全体的進行、製造中止により部品の入手が困難になるなどして施設全体の性能水準が急速に低下するようになる。15 年以上経過すると老朽化が顕著となり、操業条件の変化とも相まって建替えが課題として浮上するようになる事例が少なくない。

 

イ 長寿命化を行う場合

適時的確な点検補修で、性能低下速度を抑制できる。また稼働後十数年を経過した時点で、排ガス処理設備や蒸気過熱器、灰コンベヤ等の腐食、摩耗等が全体的に進んだ設備、DCS(分散制御システム。Distributed Control System)等の基幹的設備を更新する延命化対策を行うことで、性能水準の回復と施設の長寿命化を図る。技術革新により陳腐化した基幹的設備を更新することにより、性能水準の回復のみならず改善を図ることもできる。

この場合、年間の施設稼働日数の確保、予算の平準化、設備の更新の優先度を考慮し、数年にわたって順次延命化対策を実施していく、又は、適切な時期にまとめて延命化対策を実施することが施設の運営管理上必要となる。

 

 

 

つまり、焼却施設は稼働後10年を超えると徐々に性能が低下し、15年で老朽化が顕著になる。また、その際には技術革新が進んでおり、陳腐化した基幹設備の刷新が必要だと結論付けている。

 

 

では、その10年の間に、新たな減容化施設を建設していないプラントメーカーが入札に参加し、受託したらどうなるのか。

 

 

10年以上前の基幹設備をデフォルトで装備しているプラントメーカーの陳腐化した技術に放射性廃棄物の処理を委ねてもよいのであろうか。

 

 

 

 

そんなことを許してよいわけがない。

 

 

 

しかし、環境省は平成25年も平成26年も平成27年の入札における競争参加資格は平成13年度以降に施工実績があることと定めている。

 

 

何故、現在でも平成13年度以降のままであるのか。

 

 

確かに環境省はこれまでに、ごみ・廃棄物の減容化施設の発注業務を直接実施したことはなく、基本的にごみ焼却施設や廃棄物処理に関する減容化施設は、施設建設地の各自治体が発注を行っており、環境省補助金を各自治体に交付していただけである。

 

 

そのため、環境省は正しい要求水準書の作成や参加条件のハードル設定ができないのか。

 

 

 

実際に最近の入札に際して自治体が減容化施設の発注の際に定めている競争参加資格を見てみると、

 

ウ 運営・維持管理業務を行う企業

運営・維持管理業務を行う企業(運営事業者から同業務を受託する企業又は運営事業者に運転人員を派遣する企業)は、以下の要件を満たすこととする。運営・維持管理業務を複数の企業で実施する場合は、主たる業務を担う 1 社が、以下の要件を満たすこととする。

 

(ア) 一般廃棄物処理施設で、過去 10 年間(平成 17 年度以降)において自治体から受注したボイラー・タービン発電設備付き全連続ストーカ炉、施設規模 95t/24h 以上(47.5t/24h 以上×2炉以上の施設要件)における2年以上の運営・維持管理業務実績があること。

 

 

上記の記述が“第3 入札参加者に関する要件”に定められている。

これは、平成27年5月29日に、同じ福島県内の須賀川市が一般廃棄物処理を目的としたごみ処理施設を入札公告する際に公開した入札説明書の一文である。

http://www.kankyou-sukagawatiho.jp/eisei_info/index.php

 

 

一般ごみの焼却施設において、過去10年間での施工実績が求められているにも係らず、仮説焼却炉の建設・運営業務の発注の競争参加資格が10年以上前のもので良いわけがない。

 

 

できることならば、施工実績が過去5年以内とする等の厳格な競争参加資格要件を定めることを望む。

 

 

それでも変更ができないのであれば、平成13年以降~(現在のところ)平成17年の間に最後の施工実績があるプラントメーカーの競争参加資格を恣意的に守っているだけである。

 

 

 

シビアアクシデント対策の在り方 | 鹿児島県薩摩が川内市の原子力発電所の再稼働について

 

2015年8月11日(火)に九州電力が管轄する川内原子力発電所が再稼働した。

2013年9月15日(日)に国内で唯一稼働していた関西電力大飯原子力発電所の定期検査による停止で国内50基すべての原子力発電プラントが停止して以来、実に695日ぶりに原子力発電所が稼働したことになる。

 

 

当時国内すべての原子力発電所が停止した際の一般社団法人日本原子力産業協会の公表文を引用する。

 

 

福島第一原子力発電所の事故以来、厳しい場面はあったものの 3 度の夏を一度として大停電に至らずに過ごすことができたのは、老朽施設も含めた火力発電がフル稼働しているからに他ならない。しかし、運転する予定がなかった老朽施設の運転再開には、厳しい設備保全、運転監視等が求められ、さらに継続運転している現状は、まさに「綱渡り状態」だ。また、化石燃料消費量の増加に伴い、CO2 排出量も増加の一途をたどっている。最新鋭の施設に比較して、老朽施設の CO2排出量が多いのは事実である。

 

さらには、燃料費は事故前との比較で年間約 3.8 兆円増加し、国民一人当たりの負担で見ると約 3 万円にもなる。この規模は、3%の増税が話題となっている消費税と比較すると、約 1.4%(消費税 1%が約 2.7 兆円)に当たる。つまり、国内の原子力プラントが全て停止していることで、検討されている消費税増税額のおよそ半分に当たる国富が国外に流出していることになる。エネルギー問題も家庭生活や産業・経済活動等、広く国民に関わる問題なのである。

 

昨今の電力供給の構造は、こうした「設備面」「環境面」「コスト面」の危うさに直面している。これらの問題をクリアにし、「良質な電気」、すなわち「安全」で「安定」した電力を「低廉な価格」で供給することが必要だ。

 

現在、「長期的な視野でエネルギーをどのようにして確保するか」については政策的な議論がなされているが、その間にも必要となる「良質な電気」を供給するためにも、「CO2 を発生しない」「発電コストが安い」原子力発電が、その役割を担うべきではないか。

 

それにはまず「新規制基準」への適合確認作業を適切かつ着実に進め、安全性が確認された原子力プラントを再稼働することが重要だ。そのためにも、国、規制当局、事業者にはその経過の透明性を高めるとともに、結果についても説明責任を果たし、社会の理解を得るために、国民に正しく伝えていく取り組みを求めたい。

 

当協会も原子力産業界の一員として、原子力の必要性や安全性向上への取り組みについて、広く国民に伝わるよう努めるとともに、より実効的な規制、安全性向上に対する不断の努力を常に求め、「原子力発電の信頼回復」に尽力して参りたい。

 

 

( 引用:http://www.jaif.or.jp/ja/news/2013/president_column20_130917.pdf

 

簡単にまとめると、

 

原子力発電所の代わりに老朽化した火力発電所が頑張ってくれているので、「綱渡り状態」ではあるが、何とか乗り切ってきた。

 

 

しかし、

 

① 火力発電所に依存することでCO2の排出量は増加の一途をたどっている。

② 火力発電に必要な化石燃料を海外から輸入することで国民一人当たりの負担費用が年間3.8兆円増加し、国富の半分が海外に流出してしまう。

 

上記の現状から、「良質な電気」(=「安全」で「安定」した電力を廉価な価格で供給すること)ために原子力発電所を早く再稼働すべきである。

 

との見解だ。

 

 

そのためには、

 

① 安全性を高めること

② 社会の理解を得るために国民に正しく伝えていく取り組み

 

が必要であるし、「原子力発電の信頼回復」に尽力していく。

 

と結んでいる。

 

 

こうした主張は問題の本質からぶれることがあるため、1つずつ紐解いていこう。

 

 

 

まず、火力発電所の稼働が進むことによって我が国のCO2排出量は増加の一途をたどっているのであろうか。

 

国立研究開発法人国立環境研究所が2015年4月23日に公表している「日本の温室効果ガス排出量データ確報値」における「エネルギー起源」によるCO2排出量の2013年までのデータ推移をみると確かに2011年以降排出量は増加している。

http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/nir/nir-j.html

 

 

 

f:id:nofukushima2020:20150819134400j:plain

 

 

しかし、2013年の排出量は2007年の排出量よりも低い数値であり、また、「GDPあたりエネルギー起源のCO2排出量」の割合は2013年に減少に転じている。

 

 

 

f:id:nofukushima2020:20150819134415j:plain

 

 

 

GDPあたりの排出量割合と排出総量の推移を比べると、経済活動の活発化に伴いGDPは成長していくため、CO2は排出総量も増加していく。そのため、GDPが一定、もしくはマイナス成長を続けている状態において排出量が増加しているのであれば、その原因を火力発電所が原因と結びつけることができるかもしれない。しかし、少なくとも実質GDPが2011年以降増加している状況下において、火力発電所に依存することが原因で、「エネルギー起源」の排出量が増加しているとは断定できないのではないか。

 

次に、国民一人当たりの負担が消費税の増加3%と比べて約半分の1.4%が増加し、国富が海外に流出するといった言及について。

 

国富に関して消費税との増加分と照らし合わせた内容の話が出ているが、消費税はその性質上、国民に再分配されることが前提になっているため、単にその数値と比較をしても全く意味のないことである。

 

また、3.8兆円の国富が海外に流れてしまうといった点において、日本の貿易収支のうち2010年の輸入額は、54兆8,754億円である。仮に3.8兆円の増加する全体に占める割合は6~7%程度のため、燃料の輸入量増加に伴い大幅な国富の減少が生じるわけではない。

https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/bpnet.htm

 

これらの前段の内容は自身が身を置く業界を守る際によく使われる数値を用いた錯誤表現なので、わきに置くとする。

 

 

重要なことは、「良質な電力」において定義づけられている「安全」を高めること及び、それらの現状を広く国民に情報発信していくことである。

 

 

しかし、原子力規制委員会がこれまでに公表している「新規制基準」には、今回の東日本大震災等の大規模自然災害等を対象としたシビアアクシデント( 設計上想定していない事態が起こり、安全設計の評価上想定された手段では適切な炉心の冷却又は反応度の制御ができない状態になり、炉心溶融 又は原子炉格納容器破損に至る事象 )への対応策は基準として追加されているものの、その事態に陥ったのちの計画については規制対象とはなっていない。

http://www.nsr.go.jp/data/000070101.pdf

 

 

 

シビアアクシデントが発生した場合の対応策は準備しなければならないが、外部へ放射能が漏れたのちの事後処理についてはどのように実施するか準備する必要がないのである。

 

 

 

今回のように中間貯蔵施設や最終処分場をどこに設置し、また、放射性廃棄物の処理方法をどのように行うか、更には対象地域住民がどのように非難しその情報伝達をどのように行っていくのかといった点まで含めて事前に策定しておくことが、今後も原子力発電所を活用していくには必要なことではないか。

 

 

 

原子力発電を活用しないことによる経済損失を声高に主張するのであれば、万が一のシビアアクシデントに対する包括的なリスクマネジメントを実施することで広く国民に「安全」を訴求していく必要があると考える。