焼却炉から考える放射性廃棄物処理問題の未来

放射性廃棄物の処理は最終処分場や中間貯蔵施設、管理型処分場の建設地問題で大きな進展が見られない。現実的な手法はないか検討しています。

仮設焼却炉の受託事業 | 競争参加資格における施工実績の期限

 

 

これまでの入札公告資料をざっと目を通すと、気になる基準が設けられている。

 

競争参加資格に明記されている

 

“平成○○年度以降に、本業務で提案する仮説焼却炉と同程度の規模(1炉当たり○○○トン/日)廃棄物の処理及び清掃に関する法律第8条第1項に掲げる施設のうち、同法施行令第5条第1項に掲げる焼却施設。以下同様。)を元請けとして自ら設計し、施工した実績を有すること。”

 

また、その中にある施工実績とは、

 

“施工実績は、平成○○年度4月1日から本工事に係る提案書等の提出期限までの間に工事が完成し引渡しが済んでいるものに限るものとする。”

 

上記の文言である。

 

 

確かにこれまでに施工実績の無い、プラントメーカーやゼネコンが元請となって福島復興のための事業を行い、万が一の事故が発生するリスクを低減するためには、こうした業者の絞り込みは重要な点だといえる。

 

 

しかし、よく調べてみると、環境省が開示している入札説明書では不可解な数字になっている。

 

 

例えば、

 

・平成25年度飯舘村蕨平地区対策地域内廃棄物等処理業務(減容化処理)

施工実績:平成13年度以降…12年前までOK

http://tohoku.env.go.jp/procure/2013/pdf/20131216/1216aa.pdf

 

 

・平成 26 年度南相馬市災害廃棄物代行処理業務(減容化処理)

施工実績:平成13年度以降…13年前までOK

http://tohoku.env.go.jp/procure/2014/pdf/20141118/1118aa.pdf

 

 

・平成 27 年度楢葉町対策地域内廃棄物処理業務(減容化処理)

施工実績:平成13年度以降…14年前までOK

http://tohoku.env.go.jp/fukushima/procure/2015/06/30/upload/01_1000062667.pdf

 

 

1年経つにつれて、その競争参加基準を引き上げるわけでもなく、そのまま前例を踏襲している。

 

役所らしいといえば役所らしいのではあるが、これでは折角の競争参加資格の焼却炉運用事例の乏しい、もしくは焼却炉技術が陳腐化している企業の参加を排除できないのではないか。

 

 

焼却炉の入札案件に限らず、概して、過去の技術を利用して施工を提案する企業は見積もりが低く受注しやすいのであるが、その後の運用に事故がつきもので、予定通りに事が進まないものである。

 

 

 

また、環境省の“廃棄物処理施設長寿命化総合計画作成の手引き(ごみ焼却施設編)平成27年3月改訂”によると、

http://www.env.go.jp/recycle/waste/3r_network/7_misc/gl-ple_prov.pdf

 

廃棄物処理施設は、廃棄物の適正処理を前提として、地域における循環型社会の形成の推進や災害対策等の拠点となるインフラとしての役割が期待されています。廃棄物処理施設整備計画(平成 25 年5月閣議決定)においても、廃棄物処理施設は、3R の推進、省エネ・創エネの促進、災害対策の強化等、様々な機能・役割が求められているところです。これらの機能について、技術革新の早い分野については、早い更新が望まれる一方、高額な技術や設備の導入には予算制約があるため、一方で既存施設の長寿命化を図りながら、両者をバランスよく進めていく必要があります。さらに、今後、新設から解体までの、いわゆるライフサイクルの延長のための対策という狭義の長寿命化の取組に留まらず、更新を含め、将来にわたって必要なインフラの機能を発揮し続けるための取組を実行することにより、これまで進めてきた廃棄物処理の継続的な発展につなげていくことが重要です。

 

 

 

とし、技術革新の早い分野があることを認識しつつ、総論の用語の定義の中で、

 

 

(5)基幹的設備改良(基幹改良)事業

燃焼(溶融)設備、燃焼ガス冷却設備、排ガス処理設備など、ごみ焼却施設を構成する重要な設備や機器について、概ね10~15年ごとに実施する大規模な改良事業。循環型社会形成推進交付金の交付対象となる事業には、単なる延命化だけでなく、省エネや発電能力の向上などCO2削減に資する機能向上が求められる。 

 

 

上記の通り、ごみ焼却施設を構成する重要な設備や機器について、概ね10~15年程度で大規模な改良事業が必要であると指摘している。

 

 

また、“6.廃棄物処理施設のストックマネジメント”では、

 

 

(3)廃棄物処理施設における延命化計画

ごみ焼却施設の耐用年数はこれまでは一般的に 20 年程度とされてきたが、建物についてみれば 50 年程度の耐用年数を備えており、また、ごみ焼却施設に設置される各種の設備・機器については、20 年程度経過してもなお、受変電設備、発電設備を始めとして高い健全度を保っている設備・機器等、部分的な補修で健全度を回復することが可能なものも多い。

廃棄物処理施設内の設備・機器の維持管理を適切に行ったうえで、耐用年数の比較的短い重要設備を適切な時期に更新する等の対策を行うことにより、廃棄物処理施設全体の耐用年数の延長を図ることは、ひっ迫する地方自治体の財政に対して効果的であると同時に、資源・エネルギーの保全及び地球温暖化対策の観点からも強く望まれる。

効果的な基幹的設備の更新を含む長寿命化総合計画のイメージを図 I-5~7 に示す。

 

①性能水準の変化

ア 従来

廃棄物処理施設全体の性能水準は、竣工後、稼働時間を経るとともに腐食、摩耗、閉塞等により劣化が生じ、焼却能力や公害防止性能を維持しつつも、耐久性の低下、設備・機器の陳腐化等により徐々に低下する。

性能水準は、定期点検補修等において、腐食、損耗の大きい箇所・部品を中心に局部的な補修・交換を行うことにより低下防止が図られ、稼働後 12、13 年程度は低下が軽微である。しかし、経過年数がそれ以上に進むに従って、腐食、摩耗等の全体的進行、製造中止により部品の入手が困難になるなどして施設全体の性能水準が急速に低下するようになる。15 年以上経過すると老朽化が顕著となり、操業条件の変化とも相まって建替えが課題として浮上するようになる事例が少なくない。

 

イ 長寿命化を行う場合

適時的確な点検補修で、性能低下速度を抑制できる。また稼働後十数年を経過した時点で、排ガス処理設備や蒸気過熱器、灰コンベヤ等の腐食、摩耗等が全体的に進んだ設備、DCS(分散制御システム。Distributed Control System)等の基幹的設備を更新する延命化対策を行うことで、性能水準の回復と施設の長寿命化を図る。技術革新により陳腐化した基幹的設備を更新することにより、性能水準の回復のみならず改善を図ることもできる。

この場合、年間の施設稼働日数の確保、予算の平準化、設備の更新の優先度を考慮し、数年にわたって順次延命化対策を実施していく、又は、適切な時期にまとめて延命化対策を実施することが施設の運営管理上必要となる。

 

 

 

つまり、焼却施設は稼働後10年を超えると徐々に性能が低下し、15年で老朽化が顕著になる。また、その際には技術革新が進んでおり、陳腐化した基幹設備の刷新が必要だと結論付けている。

 

 

では、その10年の間に、新たな減容化施設を建設していないプラントメーカーが入札に参加し、受託したらどうなるのか。

 

 

10年以上前の基幹設備をデフォルトで装備しているプラントメーカーの陳腐化した技術に放射性廃棄物の処理を委ねてもよいのであろうか。

 

 

 

 

そんなことを許してよいわけがない。

 

 

 

しかし、環境省は平成25年も平成26年も平成27年の入札における競争参加資格は平成13年度以降に施工実績があることと定めている。

 

 

何故、現在でも平成13年度以降のままであるのか。

 

 

確かに環境省はこれまでに、ごみ・廃棄物の減容化施設の発注業務を直接実施したことはなく、基本的にごみ焼却施設や廃棄物処理に関する減容化施設は、施設建設地の各自治体が発注を行っており、環境省補助金を各自治体に交付していただけである。

 

 

そのため、環境省は正しい要求水準書の作成や参加条件のハードル設定ができないのか。

 

 

 

実際に最近の入札に際して自治体が減容化施設の発注の際に定めている競争参加資格を見てみると、

 

ウ 運営・維持管理業務を行う企業

運営・維持管理業務を行う企業(運営事業者から同業務を受託する企業又は運営事業者に運転人員を派遣する企業)は、以下の要件を満たすこととする。運営・維持管理業務を複数の企業で実施する場合は、主たる業務を担う 1 社が、以下の要件を満たすこととする。

 

(ア) 一般廃棄物処理施設で、過去 10 年間(平成 17 年度以降)において自治体から受注したボイラー・タービン発電設備付き全連続ストーカ炉、施設規模 95t/24h 以上(47.5t/24h 以上×2炉以上の施設要件)における2年以上の運営・維持管理業務実績があること。

 

 

上記の記述が“第3 入札参加者に関する要件”に定められている。

これは、平成27年5月29日に、同じ福島県内の須賀川市が一般廃棄物処理を目的としたごみ処理施設を入札公告する際に公開した入札説明書の一文である。

http://www.kankyou-sukagawatiho.jp/eisei_info/index.php

 

 

一般ごみの焼却施設において、過去10年間での施工実績が求められているにも係らず、仮説焼却炉の建設・運営業務の発注の競争参加資格が10年以上前のもので良いわけがない。

 

 

できることならば、施工実績が過去5年以内とする等の厳格な競争参加資格要件を定めることを望む。

 

 

それでも変更ができないのであれば、平成13年以降~(現在のところ)平成17年の間に最後の施工実績があるプラントメーカーの競争参加資格を恣意的に守っているだけである。