焼却炉から考える放射性廃棄物処理問題の未来

放射性廃棄物の処理は最終処分場や中間貯蔵施設、管理型処分場の建設地問題で大きな進展が見られない。現実的な手法はないか検討しています。

放射性廃棄物の減容化事業はPFIの基本理念と馴染むのか?

 

前回、福島県の減容化処理施設の競争参加資格について書いたが、( 仮設焼却炉の受託事業 | 競争参加資格における施工実績の期限 - 焼却炉から考える放射性廃棄物処理問題の未来 )そもそも一連の減容化施設の建設に関してどのような入札方式をとっているのか。

 

国・地方自治体が減容化施設等の所謂「はこもの」を民間企業が受託する場合、PFI( Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ )の制度を用いるケースが多い。

 

内閣府のHP( http://www8.cao.go.jp/pfi/aboutpfi.html )によるとPFIとは、

 

“公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用”

 

することにより、

 

“国や地方公共団体等が直接実施するよりも効率的かつ効果的に公共サービスを提供できる事業

 

を対象として、

 

“国や地方公共団体事業コストの削減、より質の高い公共サービスの提供を目指します”

 

上記が目的とされている。

また、その根拠として、

 

 

“英国など海外では、既にPFI方式による公共サービスの提供が実施されており、有料橋、鉄道、病院、学校などの公共施設等の整備等、再開発などの分野で成果を収めています。”

 

 

欧米での実績を取り上げている。

我が国においては、平成11年7月に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」( 索引検索結果画面 )が成立し、平成12年3月に「基本方針」が民間資金等活用事業推進委員会(PFI委員会)の審議を経て内閣総理大臣によって策定され、PFIの枠組みが設けられた。

 

 

ただPFIと一言にいってもその事業委託方式にはいくつか方式が存在する。

PFIとはPPP( Public-Private Partnership :公民( 官民 )連携)の手法の一つであり、民間の資金を活用して公共事業を行ったら効率いいんじゃない?といった発想である。

 

 

因みに、こうした一連の事業の民間委託及び、行政機能の民営化は、ケインズ経済学台頭後の膨大化した政府支出を少しでも縮小するために行われた1980年代のイギリスのサッチャリズムに端を発するリベラリズムの再興として新自由主義的な政策であり、アメリカではレーガノミクス、日本では中曽根内閣の臨調路線がその流れに同調した。

 

 

さて、話を戻すとPFI事業方式には下記の方式がある。

 

 

① BTO( Build Transfer Operate )方式

民間事業者が施設等を新たに建設し、施設完成直後に公共施設等の管理者等に所有権を移転し、民間事業者が維持・管理及び運営を行う事業方式のこと。

 

② BOT( Build Operate Transfer )方式

民間事業者が施設等を新たに建設し、維持・管理及び運営し、事業終了後に公共施設等の管理者等に施設の所有権を移転する事業方式のこと。

 

③ BOO( Build Own Operate )方式

民間事業者が施設等を新たに建設し、維持・管理及び運営し、事業終了時点で民間事業者が施設を解体・撤去する等の事業方式のこと。

 

④ RO( Rehabilitate Operate )方式

既存の施設を改修し、管理・運営する事業方式のことで、既存の所有者からの所有権移転はなく、地方公共団体が所有者となる方式のこと。

 

( http://www8.cao.go.jp/pfi/tebiki/index.html )

 

 

 

また、上記以外にPFIと類似したPPPの一つとして

 

 

⑤ DBO( Design Build Operate )方式

公共が資金調達を負担し、設計・建設、運営を民間に委託する方式のことで、民間の提供するサービスに応じて地方公共団体が費用負担する事業方式のこと。

 

このDBO方式は政府の策定したPFI法( 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 )には基づかない方式のため、各地方公共団体及び官公庁は「PFI的手法」との表現を用いている。

 

 

総務省地域力創造グループ地域振興室が平成24年12月に公表した「地方公共団体によるPFI事業とPFI法に関する調査」の調査報告書によると、

 

 

地方公共団体へのアンケートでは、「必ずしもPFI法に基づかない」PFI事業を実

施している 29 団体のうち、19 団体がこのDBO方式を念頭に置いて回答している。”

 

 

としたうえで、DBO方式のメリットとして

 

補助金交付金、起債という地方公共団体に認められた資金調達手段の活用と、設計・建設・維持管理・運営を包括的に単一の企業グループに委ねることで事業費の効率化を図るというPFI手法のメリットの活用を両立できるという点が挙げられる。”

 

としている。

また、

 

“包括的に企業グループに委ねることで、維持管理・運営を意識した設計・建設が可能

になり、総事業費の圧縮などの事業効率化が進むと共に、事務コストの軽減につながる

と認識されている。”

 

 

とし、PFI方式の評価におけるVFM( Value For Money )観点から事業費が最小化されるとの認識である。

 

さて、

ここまでPFIについて確認してきたが、本題はここからである。

 

福島県放射性廃棄物の処理事業PFI( PPP )の基本理念と馴染むのか。

 

といった疑問である。

 

 

つまり、事業費を縮小することを目的として、運用効率を向上させることでできる限り予算を削減することが目的の方式で事業者及びその減容化手法を選定するべきなのであろうか。

 

VFMといった単語が前出したが内閣府の説明によると、

 

“VFMはPFI事業における最も重要な概念の一つで、支払い(Money)に対して最も価値の高いサービス(Value)を供給するという考え方のことです。従来の方式と比べてPFIの方が総事業費をどれだけ削減できるかを示す割合”

 

上記の通りとしている。

 

要するに、ある一定の公共事業費の入札価格に対して、また要求水準書の内容に対して、一番安い金額提示をしてきた事業者の評価が一番高くなる。

 

もちろん事業者の技術提案書の内容が素晴らしければその分総合評価方式では高得点が期待できるが、福島の将来を考えたよりよい技術提案をしている事業者の価格がその分高いために落札できなくなったらどうするのだろうか。

 

 

環境省東北地方環境さ事務所福島環境再生事務所が公表した、平成25年度飯館村蕨平地区対策地域内廃棄物等処理業務(減容化処理)に関する入札説明書を見てみると、

 

入札方法において

 

“本 業 務 は 、 入 札 時 に 業 務 計 画 等 の 技 術 提 案 を 受 け 付 け 、 価 格 以 外 の 要 素と価格を総合的に評価して落札者を決定する総合評価落札方式(WTO標準型)の業務である。なお、本業務は、資料の提出、入札等を紙入札で行う対象業務である。”

 

上述の通り総合評価落札方式での入札としている。

そのうち評点の配点は

 

・総合評価点(技術評価点と価格評価点の合計)…500点

  ・技術評価点…150点

  ・価格評価点…350点

 

である。

 

http://tohoku.env.go.jp/procure/2013/pdf/20131216/1216aa.pdf

 

 

入札説明書を確認すると、価格評価点は、技術評価点のなんと2倍以上である。

 

 

確かに途方もない膨大な費用を湯水のごとく流し続けることは我が国の財政を鑑みると問題視すべきことである。

 

しかし、地域住民の安心安全を確保するために、また将来的な不安を福島に残さないためには、価格評価点の比重を高めるべきではないと考える。

 

 

 

重要視されるべきは、選定した事業者が設計・建設・運用する施設が、

 

放射性廃棄物処理の事業そのものが中長期的な日本の将来にとってプラスになるのか

 

また、

 

地域住民に対して更なる不安・不信を与えるものではないのか

 

 

この2つを軸に事業者選定を行っていくべきではないか。

 

 

 

現に引き合いに出した平成25年12月16日公告の飯館村蕨平の減容化施設は当初福島県飯舘村の公表資料では

 

・平成25年度末までに…仮設焼却炉/仮設資材化施設の事業着手

・平成26年度末目途…仮設焼却炉運転/仮設資材化実証事業開始

・3年程度で処理/実証完了を目指す

・その後速やかに、撤去・原状回復

 

( http://www.vill.iitate.fukushima.jp/saigai/wp-content/uploads/2013/06/24b61e814a407fdaa729a76c651ef104.pdf )

 

上記のスケジュールが公表されていた。

 

しかし、その後環境省が平成26年11月6日に公表した資料では、

 

・平成25年度末までに…仮設焼却炉/仮設資材化施設の事業着手

平成27年度秋頃目途…仮設焼却炉運転/仮設資材化実証事業開始

・3年程度で処理/実証完了を目指す

・その後速やかに、撤去・原状回復

 

http://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_fukushima/pdf/06_01_01.pdf )

 

と変更されている。

 

実際にどういったやり取りが行われていたのかは確認のしようがないが、半年以上の遅れを既に予定工期(平成26年度末)の数か月前から公表するということは非常に不自然と言わざるを得ない。

 

“※処理対象物の量の精査や設計の結果などにより、スケジュールの変更があり得ます。”

 

と説明をしているが、果たして真実はどこにあるのか。

 

 

中間貯蔵施設や、最終処分場の建設が後手に回る中、また、一時保管しているフレコンバックの耐用年数が限界を迎えている中、一日でも早く適切に、また、安心安全な放射性廃棄物処理が進んでいくことを願う。