川内村の仮設焼却施設建設でいったい何が起こっているのか
2015年7月23日(木)付で「南いわき開閉所における仮設焼却炉受け入れ表明に対する抗議および公開質問書」と題した質問状が、“放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会”から福島県川内村の遠藤雄幸村長宛に送られた。( http://gomif.blog.fc2.com/blog-entry-239.html )
その質問状によると大きく分けて2つの要旨がある。
① 五牧沢の焼却炉について
② 焼却ではなく保管の要請を
である。
これは、先立って7月16日(木)に郡山市で実施された、環境省の小里泰弘環境副大臣と田村市の富塚市長及び、川内村の遠藤村長が会談し、田村市都路町と川内村にまたがる東京電力南いわき開閉所に設ける農林業系廃棄物の減容化施設の整備受入れ表明を受けたものである。( http://www.minpo.jp/news/detail/2015071724122 )
福島民報によると、本整備を巡っては両市村での住民説明合いで安全面や風評などを懸念する住民からの計画への反対意見が相次いでいたという。
村長への公開質問状のによると、
下記引用
①日立造船の受注について
川内村五枚沢の仮設焼却炉は、日立造船が建設、運転を請け負い2014年12月から焼却が開始されています。ご存知のように日立造船は鮫川村で爆発事故を引き起こした事業者ですが、一定期間の入札参加禁止または自粛もなく本事業を受注したことについて、どのようなご検討またご判断をなされましたでしょうか。住民説明は充分になされ、不安は払しょくされたとお考えでしょうか。
②協議会への出席について
環境省主催で計4回開かれている「可燃性廃棄物減容化事業に係る協議会(仮設焼却施設運営協議会)」に、貴職は一度も出席されていないようですが、理由をお聞かせください。焼却炉を受け入れた責任者として同協議会に出席しないのは無責任であると言わざるを得ませんが、自らのご判断なのかそれとも環境省から出席を止められたのかどちらでしょうか。
③処理量との処理能力との相違について
本焼却炉で処理されるのは1日当たり7トンとされていますが、現場作業員によれば、本焼却炉の持つ処理能力は1日当り40数トン、24時間連続運転仕様であるとのことです。これを無視して焼却時間を大幅短縮し、毎日点火、消火を繰り返すという無駄で非効率な処理を行っているわけですが、なぜ焼却処理量に対し6倍もの大きさの施設を設置する必要があるのか確認されましたでしょうか。処理対象物総量は1,740トンであるとされ、これを本来の処理能力で計算するとわずか43.5日間で処理が終了することになりますが、これを1年かけて処理することで作業員を無駄に被ばくさせることになります。これについて環境省からどのように説明を受けておられますか。
④土砂災害危険区域での設置について
焼却炉の至近距離には土砂災害警戒区域・土石流危険渓流の立て看板が掲示されていますが、設置に問題はないのか、環境省からどのように説明を受けておられますか。協議会でも議事録に入っていないようですが、協議会および住民には説明されていますでしょうか。
⑤HPへの掲載について
貴村のHPに仮設焼却炉についての情報は見当たらないようですが何故でしょうか。爆発事故を起こした日立造船の焼却炉でもあり、一層の情報開示が求められるはずです。今からでもサイトを開設し、日々の維持管理データをきちんと掲載していただくのが受け入れ自治体としての説明責任ではないでしょうか。
引用ここまで( http://gomif.blog.fc2.com/blog-entry-239.html )
要約すると
① 鮫川村で事故を起こした日立造船がなぜ受注したのか?
② 遠藤村長はなぜ環境省主催の情報共有の場に一度も参加していないのか?
③ 焼却施設の処理能力が今回の焼却対象物の総量に対して6倍も高いのに、なぜ1年間も運転する必要があるのか?
④ 焼却処理施設の自然災害への危機管理体制及び、その対策はどうなっているのか?
⑤ 今回の焼却炉の情報を公開していないのはなぜか?
各質問は上記にまとめられよう。
過去に減容化施設においてどのような事態が生じているかしっかりと認識していて、想定外の事故とされた福島第一原発事故の教訓をしっかりと活かした計画で進めているのか。また、そのための村長自身の情報収集と住民への説明が十分と考えているのか。
を確認する内容だといえる。
確かに、前回の鮫川村の件を検討した際、事故の発生の多くが、安全・安心な減容化施設を運営できなかった、( もしくはその蓋然性が非常に低いまま運営を行った )日立造船が新たに運営を受託することになった、川内村の地域住民からしてみれば、今回の日立造船の運営は非常に不信感を頂くものである。
また、そのことがより村長自身の情報発信の在り方や受け入れの決断について疑義が生じるのも無理もない。
そして、2つ目の点も今後の放射性廃棄物焼却において、注意深い観察が必要な勘所である。
下記再度引用
放射性廃棄物は焼却せず一元管理が原則です。本来ならば東京電力第二原発へ収容されるべきであり、そこに収めきれない分は南いわき開閉所へ強固な保管庫を造って長期保管するべきではないでしょうか。第二原発は廃炉にすることを前提に再生可能エネルギーを推進していますが、なぜ廃炉にするとしている第二原発を利用しないのでしょうか。また被害者の代理であるはずの貴職がこれを求めないのでしょうか。
焼却炉から出る排ガスには微量であっても放射性物質が含まれ、吸引することで内部被ばくを引き起こします。お金に代えられる問題ではありません。
「田村、川内の廃棄物も処理するから」というのは根拠として筋が通りません。それら農業系副産物は原発事故さえなければ農家にとって大切な資材・財産だったものであり、一方的にこれらを汚染されて財産を侵害されたのですから、「自分の所で発生したゴミなのだから自分の所で処理しなければ」などという理屈は本末転倒で成り立ちません。
世界史上最悪の原発事故を起こした東京電力の責任として、放射能汚染物を引き取るのは当然の道理であり、「無主物」などというあまりに非常識な主張など認められるはずがありませんが、貴職はこれを認めたということなのでしょうか?だから「地元のゴミは地元で」などという荒唐無稽な発想が出てくるのではないでしょうか?
私達は原発事故を引き起こした罪を認めようとしない姿勢を決して容認するわけにはいきません。
改めて今回の判断について強く抗議するとともに、早急に説明を求めます。
引用ここまで( http://gomif.blog.fc2.com/blog-entry-239.html )
ポイントは、
・放射性廃棄物を減容化(焼却処理)する必要があるのか?
⇒燃やさないで東京電力の敷地に埋めろ
・そもそも原発事故が起きなければ今回の農林業系廃棄物は全て農家の財産だったはず。財産権を侵害されたのに、その処分における負担を侵害された自治体が被るのは理解ならない。
⇒東京電力が全て負担しろ
・原発事故を引き起こした罪を認めようとしない姿勢がムカつく。
⇒東京電力しっかり謝罪して全部対応しろ
そもそも村長は被害者の代表もしくは( 代理 )なのだから、これら住民の意見をしっかりと伝えろよ。
といったところでしょうか。
これらは今後の放射性廃棄物の減容化及び、処分に関して非常に難しい点である。
つまり、実際に民家の軒先にある放射性廃棄物( 農林業系廃棄物 )の処分をいかに早期に進めて、児童や若者の外部被爆の機会を低減していこうかといった建設的な議論よりも、その対応に係る責任追及にのみ焦点が当てられ、議論が全く進まなくなるのである。
確かに、福島第一原発事故が起きなければ生まれなかった農林業系廃棄物の処分問題に対して、誰がその責任を取るのか、また、誰の負担でその処分を進めていくのかといった議論は大いに展開されるべきではある。
しかし、震災後4年経ってもその責任の所在は不明瞭なままであるのとともに、果たして東京電力のみが咎められるべきなのか、といった点は私個人の意見としては非常に懐疑的である。
というのも、確かに福島第一原子力発電所は東京電力が運営責任を持ち、関東圏への電力供給を行っていたとの点で、地元福島の住民には必要のないものであり、その恩恵を受けていた東京都民や東京電飾そのものが責任を取るべきとの論が展開されるのは理解できる。
しかし、果たしてそうだろうか。
高度経済成長に乗り遅れた福島県の近代化促進のための地域雇用の創生や産業振興に大いに貢献してきたのではないだろうか。
福島県によると、昭和49年( 1974年 )に制度化された“電源三法交付金”に基づく福島県の交付実績は平成25年( 2013年 )までの40年間の間に、累計で約3,169億円の交付が実施され、そのうち、電源立地地域対策交付金( 原子力発電施設等周辺地域交付金相当部分 )23%の約729億円が福島県の原子力発電所が存在することによって得た国からの交付金ということになる。
( http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/life/145402_301097_misc.pdf )
また、そのほかにも東京電力の地元経済への雇用創出貢献及び、職員等の行き来による地元飲食店や宿泊施設への貢献を含めると年間20億円程度のキャッシュが福島県に原子力発電所があることによって生み出されていたと推計することができる。
また、電源立地地域対策交付金の平成25年度実績で
川内村…59,726,408円
田村市…50,563,501円
更には、昭和49年度から平成25年度の累積実績では、
川内村…1,062,511,000円
田村市…455,000,000円
上記の交付金を受け取っている。
また、震災前の平成21年度の川内村の一般会計決算状況を見てみると、
( http://www.kawauchimura.jp/outline/account/account21_1.html )
川内村の歳入…2,970,000,000円( 約29億7千万円 )
うち自主財源…719,786,000円( 約7億2千万円 )
うち依存財源…2,254,583,000円( 約22億5千万円 )
上記の通り、自主財源の歳費における構成比率が24%程度で、地方交付税交付金や福島県及び国庫の支出金等の依存なしに自治体運営がままならない状態であった。
必ずしも電源立地地域対策交付金が全てとは言い切れないが、こうした状況下において、これまで原子力発電所が存在することによる恩恵を地元は全く受けておらず、勝手に設置して事故を引き起こした東京電力の責任だと匙を投げてしまっては、今後の川内村、福島県及び、日本の復興へ向けた建設的な議論及び、実施は進展していかない。
川内村の遠藤村長への質問状を拝読する限り、「全ての責任は東京電力にあり、我々は被害者である」との意識が強く打ち出されているように感じる。
これまで福島県に原子力発電所があることによって地元自治体が恩恵を受けてきたことは自明の事実であり、建設及び運転を容認してきた地元自治体の民意を今更否定することはできない。
そのため、福島県の対策地域内及び、その他近隣自治体は、今ある放射性廃棄物の処理の問題を次世代に残さず、どうやったらこの問題を解決していくことができるのかをノーサイドで話し合うことを望みたい。