フレコンバッグが先か、減容化が先か、それは大問題だ
年末年始の多忙な時期を何とか乗り越え段落したところで、久々に環境省の放射性廃棄物汚染処理情報サイトを確認すると、なんと12月25日に“福島県関連の最新情報”がトップページ公表されていた。
飯館村蕨平地区の減容化施設の件か。
いや、それとも12月10日に落札予定だった開閉所農林業系廃棄物の減容化処理の入札結果か。
nofukushima2020.hatenablog.com
タイトルには
「国直轄による福島県における災害廃棄物等の処理進捗状況」
とある。
ページを開くとそこには、286KBのPDFがUPされていた。
なんとそこには、これまでのフォーマットよろしく、進捗状況に関連した内容が公開されていた。
残念。
ただただ事実を積み重ねた“国直轄による福島県(対策地域内)における災害廃棄物等の処理進捗状況”と題した1ページ目のスライド。
「国直轄による福島県における仮置場と仮設焼却施設の設置状況(平成27年12月25日現在)」と題したこれまたこれまで通りの資料のアップデートを行ったスライド。
いや、
またあった。
ここにも相変わらず、「事実」が公表されていた。
飯館村蕨平の減容化処理施設の進捗状況が
処理対象物搬入中(平成28年1月より稼働予定)
と記載されている。
確か、12月中旬に最低でも1基は稼働を開始する予定だったはずだが、やはり遅れている模様だ。
火入れ式を行う発表は行っても、稼働が遅れる発表を行わないのはさすがといったところであろうか。
飯館村蕨平の工期が遅れているのではないかといったことは既に何度も取り上げてきたが、ここにきて開閉所農林業系廃棄物の減容化処理事業が遅れるとなると困ったことがある。
それは、現在、仮置き場や住宅の近隣に置かれている焼却対象物。
つまり、これから減容化処理施設に収集搬入され、焼却炉に投入される放射性廃棄物である。
何が問題か。
これまでも触れてきたが、放射性を帯びた指定廃棄物はフレコンバック(フレキシブルコンテナバッグ)と呼ばれる袋に入れられて保管されている。
もう少し丁寧に確認をすると、フレコンバッグに入れられて保管されている指定廃棄物は、
①減容化後に中間貯蔵施設建設が間に合わずに仮置き場に置かれている
②減容化以前から100,000 Bq / kgを超えていて仮置き場に置かれている
③住宅の近隣や道路脇、農地にまとめて放置されている
上記3つの状態に分けることができる。
また、
①②は管理されている仮置き場に置かれているため、③と比べると保管状態が良いと考えられる。
その点に関しては、環境省が取材に対して回答を行っている。
誤解が生じると困るため、全文を引用させていただく。
除染で出た汚染土などが詰まった袋(フレコンバッグ)が耐用年数をこえて使用されることについて、福島環境再生事務所の関谷毅史所長は12日、「巡回などふだんの管理の中で確認し、問題があれば現場で対応していくことに尽きる」と述べた。袋の詰め替えなどの抜本対策は当面必要ないとの考えを示したものだ。
福島県川内村であった汚染土などの仮置き場に関する住民説明会の後、朝日新聞などへの取材に語った。
汚染土などの保管をめぐり、環境省は当初、3年をめどに中間貯蔵施設に運ぶと表明し、屋外での想定耐用年数が3年の袋も多く使っている。だが村内には、すでに保管が3年をこえた仮置き場もある。運搬先の中間貯蔵施設の建設の遅れから、保管中に耐用年数をこえるおそれがあるため、周辺住民らからは「袋が傷んで汚染土が外に漏れ出さないか」といった不安が出ている。その点について、関谷所長は「フレコンバッグの耐用年数は最低3年間だが、これは日光を直接当てた想定だ。実際には袋の上にシートをかぶせ、日光が当たらないようにしている。3年が経ったから直ちに問題が起きるとは思わない」と述べた。そのうえで「現時点で管理の方法を変える必要はない」とし、すでに取り組んでいる定期点検や災害時の巡回などで対応できるとの考えを示した。”
これはどうゆうことか。
フレコンバックの耐用年数が切れて本来の役割が果たせなくなるといったことであろうか。
理解を促進するためにフレコンバッグについて調べてみた。
フレキシブルコンテナとは、日本フレキシブルコンテナ工業会によると、
“ フレキシブルコンテナは、粉粒体を大量輸送することを目的に、折り畳みができる柔軟性の材料を用いて袋状に造られ、吊り上げるためのつり部と、注入・排出ができる開口部を備えたコンテナ(充填荷重が0.5トン~3トン)”
のことを言うらしい。
また、平成25年5月の環境省の廃棄物関係ガイドライン第2版によると、
“フレキシブルコンテナの種類としてランニング形とクロス形がある(JIS Z 1651による。この他、JIS 適合確認されていない土のうに類するバッグも市販されている。”
と、フレコンバッグの種類が多くあることを認識したうえで、
“使用にあたっては、保管の条件に適していることを確認した上で選択する必要がある)。”
そのため、
“保管が一定の期間にわたる場合や、水分を多く含む廃棄物や比較的重量のある廃棄物については、クロス形を二重にすることやランニング形等の耐久性の高いものを用いることが望ましい。また、風雨や紫外線にさらされる屋外等で保管する場合には、UV加工のクロス形やランニング形等、耐候性に優れたものを選択することが望ましい。”
としたうえで、“耐候性(紫外線)等について”の表記において
“フレキシブルコンテナは JIS Z 1651 で定義されており、クロス形、ランニング形等の種類がある。”
“例えば、日本フレキシブルコンテナ工業会の自主規格においては、900 時間の耐候性試験を行い、初期強度の 70%を維持していることを確認するなどしており、3年程度の保管後においても、重機による収集・運搬等に耐えうるように設計されている。”
このように、フレコンバックは概ね3年間の耐用年数のものを使用してきたのである。
※記載内容は平成25年5月の“除染関係ガイドライン”第2版による。
余談だが、前出のガイドラインは平成23年12月に第1版が公表されているが、その中ではフレコンバッグの耐候性が保持される年数を
“JIS によるランニング型はゴムや塩ビ製であり、5~7 年の耐候性がある。一方、JISによるクロス型はポリプロピレン製であり、上記の耐候性は期待できない。”
と、少なくとも5年はあると断定していた。
しかし、その1年半後の第2版では3年と表現を変更した。
そもそも放射性廃棄物を保管するためのフレコンバッグなど日本にはなかったはずだし、その前提条件をよそに、
“5~7年の耐候性がある”
と断定したことは、明らかな間違いであった。
話を本題に戻すと、
新年を迎え、今年の3月であれからもう5年になる。
事故発生当時からすぐにフレコンバックに廃棄物を保管していたわけはないが、環境省が公表している“国直轄による福島県における災害廃棄物等の処理進捗状況”から、
平成27年11月の時点で、災害廃棄物等の合計は約80万トンと推定されている。
・仮置き場への搬入済量が65万トン(平成26年11月は25万トン)
・減容化処理済量が16.5万トン(そのうち指定廃棄物の処理済量は6.8万トン)
これまでのところ、帰還の妨げとなる廃棄物の撤去と仮置場への搬入を優先しているため、単純には言えないが、約40%が指定廃棄物であり、全体で少なくとも約32万トンが指定廃棄物となる。
また、平成26年3月までに約34万トンの災害廃棄物が仮置場に搬入されており、そのうちの40%の13.6万トンが指定廃棄物だった場合、現在、6.8万トンの指定廃棄物がガイドライン制定後の平成23年12月から26年3月までの間にフレキシブルコンテナバッグに詰め込まれた廃棄物だと考えられる。
つまり、第2版で想定されていた耐候性が守られる3年が既に過ぎているとフレコンバッグ存在することも大いに考えられる。
さて、先ほどの環境省の見解に戻る。
記事の中で環境省の関谷所長は“3年が経ったから直ちに問題が起きるとは思わない”と回答している。
的を得ている。
環境省がガイドラインで公表している耐候性の3年の根拠はどこにもない。
そもそも放射性廃棄物を保管・運搬するために作られたフレコンバッグなどその当時に、いや今もかもしれないが、存在しないのである。
つまり「3年」が経ったからと言って直ちに何かが起こるのではなく、もう既に起きているかもしれないし、明日何か起こるかもしれないという、未知の経験を誰も予測できないのである。
但し、確かにJIS基準のお墨付きを頂かなくても、もどんなフレコンバッグも使っていれば耐候性は低下し、やがて使えなくなることは間違いない。
その中で、廃棄物の仮置場への搬入は続き、一刻も早い減容化処理が求められる。
しかしながら、減容化処理事業は進まない。
飯館村蕨平の減容化施設は未だ稼働せず、開閉所農林業系廃棄物処理施設の入札結果は未だ公表されない。
フレコンバッグの耐候性がなくなり、再度放射性物質が周囲に飛散もしくは地下水に浸透するのが先か、それとも減容化処理施設が順調に完成してフレコンバッグが焼却炉に投入されるのが先か。
何を恐れているのだろうか。
もっとオープンに議論すればよいのではないか。
2016年1月は今後の我が国の放射性廃棄物処理問題の行く末を占う、非常に重要な月になりそうだ。