焼却炉から考える放射性廃棄物処理問題の未来

放射性廃棄物の処理は最終処分場や中間貯蔵施設、管理型処分場の建設地問題で大きな進展が見られない。現実的な手法はないか検討しています。

環境省に裏切られ続ける福島 | 未来が見えない放射性廃棄物処理問題の実態

 

一報が入った。

開閉所農林業廃棄物処理業務(減容化処理)の落札結果が公表されたとのことだ。

 

結果を見て非常に驚いた。

というよりはむしろ、これまで感じていた違和感が解消されたのである。

 

 

何故、我が国の放射性廃棄物処理が大きな進展を成し得ないのか。 

何故、福島の復興が巨額の利権ビジネスと揶揄されているのか。

何故、福島の地元住民及び県外の住民や地方自治体が、我が国全体の危機に対して非協力的なのか。

 

 

様々な立場の人、企業、自治体、行政の関係性やそれを取り扱うメディア側の微妙な距離感に非常に違和感を持っていた。

 

その答えが発表されたような気がした。

 

 

公表された結果は下記のとおり、

 

 

 

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落札事業

三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社( 以下、MHIEC )

 

前回にも触れたPFI的手法としてのDBO方式(WTO標準型)の総合評価落札方式である。

 

 

nofukushima2020.hatenablog.com

 

 

 

 

既に理解されているとは思うが、

 

MHIECは、

技術評価点…4位(最下位)

価格評価点…1位

 

 

上記の評価に基づいた落札である。

 

 

 

MHIECは価格評価点で、2番目に低い入札価格を提示している株式会社IHI環境エンジニアリング( 以下、IKE )と2,640,000,000円( 26億4千万円 )もの価格差がある。

 

一方で、技術評価点でIKEは33.3ポイントを獲得しているため、MHIECの24.1ポイントと9.2ポイントの差がある。

 

そのため、一つの疑問が生じる。

 

仮に、26億4千万円の差が技術点9.2ポイントの差とすると、1ポイント当たり、約2億8700万円の差が生じることになる。

 

9ポイントが評価項目のどの点が反映されているかはわからないため、この表現が正確ではないかもしれないが、

 

 

MHIECはIKEの提案と比べて

 

26億4千万円分の作業を省いた

 

ことになる。

 

もちろん、企業努力でできる限りのコスト削減を行っているのかもしれない。

 

しかし、価格評価点2位のIKEと3位の株式会社神鋼環境ソリューション( 以下、KES )の入札金額の差が368,000,000円(3億6800万円)である。

 

 

この程度の差であれば、企業努力と言われてもなんとなく納得できるがさすがに26億もの開きがあると、必要なものまで削ってしまったのではないか、もしくは非常に安易な事業計画になっているのではないかと勘ぐってしまう。

 

 

ちなみに、価格評価点でこれほどの総合評価点に影響を与えるとなると、極論、日立造船株式会社( 以下、Hitz )とMHIECの2社入札であれば、MHIECは技術評価点が0点でも競合入札で落札することができたということになる。

 

 もちろん、技術点が0点だと入札資格なしと判断されてしまうだろうが。

 

 

わざわざ環境省福島環境再生事務所の公式HPに「ダンピング防止について」のPDFを公開しているにもかかわらず、26億もの差がある入札に対して環境省としてはどのような見解なのだろうか。

 

 

 

さて、以前に確認した通り、総合評価方式の技術評価点と価格評価点の配点は

 

 

技術評価点…350点満点

価格評価点…150点満点

 

上記の通りである。

 

 

150点満点はずの技術評価点の最高点が33.3点であるのは疑問だが、仮に今回の技術評価点の満点が50点であった場合、価格評価点を7分の1( 350点満点を50点満点に換算 )にして、技術評価点及び価格評価点を横並びで比較を行うと、下記の通りとなる。

 

 

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価格評価点と技術評価点が同割合で評価される場合、順位が入れ替わるのである。

 

 

総合評価方式の入札では、どうしても落札したい場合、不正な行為をはたくことで落札確立を高めることができるポイントがある。

 

 

総合評価方式の入札の場合、

①技術評価( 技術提案書の評価 )

②価格評価( 金額の入札 )

 

上記の順で評価が進められる。

 

つまり、①の技術評価点が低かった場合、②の価格評価点を多くとり落札を目指すことができるのである。

 

 

「技術評価点の点数が低ければ、抜きんでた最低価格で入札せよ」

 

悪魔のささやきが聞こえそうだ。

 

 

 

よく考えてほしい。

 

技術評価点が低いということは、

 

①そもそも受託事業を運営するためのノウハウが他社と比べて少ない。(技術力の差)

②他社と比べて十分に安心・安全な運営体制を提案できていない。(作業範囲の差)

 

上記のどちらかが考えられる。

 

 

また、価格評価点抜きんでて高いということは、

 

③技術評価点で劣勢なのが分かったのちに、落札を目指してダンピングを行った。

④そもそもの提案内容の作業範囲が他社と比べて狭いため費用が安い。

 

ということが考えられる。

 

 

それぞれを、

 

①⇒③:悪質業者

①⇒④:未熟業者

②⇒③:悪質業者

②⇒④:未熟業者

 

上記のように分類できよう。

 

では、今回のケースはどうだったのか。

 

 

MHIECは技術評価点が低いとわかった時点で、それが①だったのか②だったのかは定かではないが、その後に③を選択したと考えられる。

 

 

そのため、上記分類に乗っ取ると、MHIECは悪質業者と言えよう。

 

 

 

というのも、上述のMHIECとIKEの価格評価点に対する技術評価点の1ポイント当たりの金額換算が2憶8700万円であったのに対して、IKEとKESとのそれは1億1500万円であった。

 

技術評価点1ポイント当たりのコストで2倍以上の開きがあったのだ。

 

 

 

これはMHIECに、いや今回の入札案件に限った話ではない。

 

 

総合評価方式の競合入札案件において、技術評価点が他社と比べて離れている場合、その時点で入札資格を排除しないと、具体的には、技術評価点が最下位の事業者は価格評価点を獲得しえないようにするといった対策を講じないと、このような事態が頻発するのではないだろうか。

 

 

以前指摘したように、放射性廃棄物の減容化事業をめぐる入札方法はこれまでを踏襲したPFIの基本理念に即した入札方式には馴染まない。

 

 

何故なら、こうした安かろう、悪かろうがあってはいけないからだ。

 

 

 

確かに、これまでのルールを根本から変えることは難しいかもしれない。

 

 

しかし、このままでは、誰一人として我が国の放射性廃棄物処理の問題に対して真剣に検討し、協力しようともしないだろう。

 

何故なら住民の安心・安全のための事業者選定のシステムが破たんしているのに、そのシステムを利用する環境省が真剣に構造改革を実施しようとしていないからだ。

 

このままでは、2020年の東京オリンピックどころではない。

福島の復興、我が国の未来はお先真っ暗である。

 

 

 

では、どうしたらよいのか。

 

これまで半年以上にわたって焼却炉及び減容化施設といった少し斜めから福島の復興に向けた取り組みに対して独自に情報収集を行ってきた、私なりの一つの結論を出したいと思う。

 

 

①入札参加資格の基準の見直し

・過去10年以内に提案内容と同一焼却炉形式での竣工及び運用実績がある企業のみ入札資格を得る。

・過去5年以内に減容化施設運営に関連して事故を起こした企業は入札資格を得ない。

・過去5年以内に工期の度重なる遅れを生じさせた企業は入札参加資格を得ない。

 

 

②入札方式の見直し

・総合評価方式の技術評価点と価格評価点の配分を同等にする。

・競合入札の際に技術評価点が最下位の業者は価格評価へ進めないようにする。

 

 

更に加えて、地元住民及び自治体から100人を匿名のまま無作為に選定して、応札業者に対する人気投票を行ってはいかがだろうか。

 

そのポイントを1人1点の100点満点で加点とし、

 

技術評価点+価格評価点+地元評価点

 

上記の合計で総合評価を行う。

 

これを

 

復興特別総合評価方式

 

 とでも名づけよう。

 

 

このような評価に基づいて実際の提案実施内容や事業者が選定されれば、地元住民も自治体も環境省が選定したのではなく、自分たちが選んだ受託事業の内容、受託事事業者として認識し、より多くの協力が得られるのではないかと考える。

 

 

そして、従前のPPPの事業方式の1つであるDBO方式の枠を超えて、官+民+地元の協力事業方式へと変容させることが求められる。

 

ついでにこちらは、

 

Co-DBO方式

 

としたい。

 

 

 

 

いま変化をもたらさなければ、もう放射性廃棄物処理に未来はない。

 

そんなことはわかっているのに、主張しているのに、変わらない。

 

こんな時に、今更ながらマスメディアの力の強さを再確認する。

 

灯台下暗しとはよく言ったものだが、灯台はいつまで立っても自分の足元は照らせないのである。

 

だから今後もこうした形で情報を発信を続けていきたい。