焼却炉から考える放射性廃棄物処理問題の未来

放射性廃棄物の処理は最終処分場や中間貯蔵施設、管理型処分場の建設地問題で大きな進展が見られない。現実的な手法はないか検討しています。

放射能濃度は経時減衰する? 30年後の試算から現状を認識する

 

前回7月24日取り上げた、除去土壌に関する件とは別に7月21日の検討会で公表された資料には、「放射能濃度毎の経時変化」といったグラフが記載されていた。( https://josen.env.go.jp/chukanchozou/facility/effort/investigative_commission/pdf/proceedings_150721_07.pdf

 

まず、「除去土壌などの発生量推計」では、

 

① 8,000Bq/kg以下の土壌など…約1,006万㎥

② 8,000Bq/kg超 10万Bq/kg以下の土壌など…約1,035万㎥

③ 10万Bq/kg超の土壌など…約1万㎥

④ 除染廃棄物の焼却灰…155万㎥

⑤ 10万Bq/kg超の対策地域内廃棄物など…2万㎥

 

と分類されている。

 

※この土壌“など”のなどには、先日RADIEX2015にて、大迫政浩氏( 国立研究開発法人国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センター長 )が取り上げていた「2,000万㎥以上になるとみられる土壌や廃棄物」として指摘していた、その他農業系廃棄物も含まれるものと考えられる。

 

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また、「放射能ごとの経時変化」において、今後30年で8,000Bq/kg~10万Bq/kg以下の除去土壌量のうち4割ほどが8,000Bq/kg以下に減衰されるとしている。

 

 

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環境省の公式HPでは、“平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により、放射性セシウム等の放射性物質が放出されました。放射性物質汚染対処特措法では、廃棄物の事故由来放射性物質による汚染の状況調査等の対象は、セシウム134及びセシウム137に限るとされています。”とあり、“セシウム134、セシウム137の半減期はそれぞれ約2年、約30年”と半減期について明記されている。

 

また、その他放射性物質としては、“セシウム134、セシウム137以外にも、ヨウ素131、ストロンチウム90、プルトニウムなど”があるが、“平成23年に文部科学省が行った調査結果では、「プルトニウムストロンチウムの沈着量の最高値が検出された箇所において、仮に、50年間滞在した場合に生じる、土壌からの再浮遊に由来する吸入被ばく、及び土壌からの外部被ばく線量の積算値(以下、「50 年間積算実効線量」と言う。)について、IAEA が提案している緊急事態時の被ばく評価方法に基づき計算したところ、セシウム134やセシウム137の沈着量の最高値が検出された箇所における50年間積算実効線量と比べて、非常に小さいことが確認された。”ことによって、“今後の被ばく線量評価や除染対策においては、セシウム134、セシウム137の沈着量に着目していくことが適切であると考える。”と結論付けている。( http://shiteihaiki.env.go.jp/faq/

 

このことから、環境省放射性廃棄物に附着している「放射性物質」は、セシウム134とセシウム137を対象にし、7月21日に環境省が公表した資料のグラフを読み取ってみたい。

 

まず、セシウム134とセシウム137の半減期がそれぞれ約2年と約30年とされているため、

 

セシウム134…α = β( 1/2 )^n/2

セシウム137…α = β( 1/2 )^n/30

 

α = n年後の放射能濃度

β = 評価時点の放射能濃度

 

また、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構福島開発部門のデータに基づくと事故発生直後のセシウム134とセシウム137の放射能の割合はほぼ1:1であったと報告している。( http://fukushima.jaea.go.jp/initiatives/cat01/pdf05/02-Appendix3-2.pdf

 

そのため、仮に発生直後10万Bq/kgの放射能濃度の廃棄物が存在し、かつそれぞれが1:1の割合で含まれていた場合の減衰は以下のようになる。

 

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「評価時点」が2011年3月と仮定した場合、自然に現在2015年7月時点で約56,00Bq/kgまで減衰していることになる。

 

7月21日に公表された資料の中で「評価時点」は明確ではないが、2011年3月に仮定した場合、8,000Bq/kg~10万Bq/kgの放射能濃度の廃棄物のうち30年後に8,000Bq/kg以下に減衰するためには、発生当時の2011年の時点で、32,000Bq/kg以下でないと減衰しないことになる。

 

 

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つまり、6割以上がその時点で32,000Bq/kg超の放射能濃度を有していたことになる。

また、その当時100,000Bq/kgの放射能濃度がある廃棄物は8,000Bq/kg以下になるには、80年の歳月が必要となる。

 

 

あるいは、今回の環境省が公表した資料の「評価時点」が2014年であった場合、セシウム134は半減期を経過しセシウム137の放射能能割合は約1:2の比となる。

 

この場合、8,000Bq/kg~10万Bq/kgの放射能濃度の廃棄物のうち30年後に8,000Bq/kg以下に減衰するためには、2014年の時点で、24,000Bq/kg以下でないと減衰しないことになり、100,000Bq/kgの放射能濃度がある廃棄物が8,000Bq/kg以下になるには、93年後の2116年と試算される。

 

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現存する放射性廃棄物を、人体に影響がなくなる程度まで放射能濃度を減衰させるには、数十年といった歳月が必要となる。

 

そのため、できる限り放射能濃度を抑える形での減容化手法を講じることが必要不可欠と結論付けることができるのではないか。

 

以前にも触れたが、熱処理における減容化手法は焼却方式によって、放射能濃度の濃縮率が異なる。

 

現在価値のコスト認識や価値観で放射性廃棄物の処理方法を決定するのではなく、我が国の未来を考えた上での廃棄物処理の在り方について検討することを強く要望したい。

 

 

 

 

 

※参考で

2011年3月時点で100,000Bq/kgの放射能濃度を有していた場合の減衰推移図

 

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