川内村の仮設焼却施設建設でいったい何が起こっているのか
2015年7月23日(木)付で「南いわき開閉所における仮設焼却炉受け入れ表明に対する抗議および公開質問書」と題した質問状が、“放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会”から福島県川内村の遠藤雄幸村長宛に送られた。( http://gomif.blog.fc2.com/blog-entry-239.html )
その質問状によると大きく分けて2つの要旨がある。
① 五牧沢の焼却炉について
② 焼却ではなく保管の要請を
である。
これは、先立って7月16日(木)に郡山市で実施された、環境省の小里泰弘環境副大臣と田村市の富塚市長及び、川内村の遠藤村長が会談し、田村市都路町と川内村にまたがる東京電力南いわき開閉所に設ける農林業系廃棄物の減容化施設の整備受入れ表明を受けたものである。( http://www.minpo.jp/news/detail/2015071724122 )
福島民報によると、本整備を巡っては両市村での住民説明合いで安全面や風評などを懸念する住民からの計画への反対意見が相次いでいたという。
村長への公開質問状のによると、
下記引用
①日立造船の受注について
川内村五枚沢の仮設焼却炉は、日立造船が建設、運転を請け負い2014年12月から焼却が開始されています。ご存知のように日立造船は鮫川村で爆発事故を引き起こした事業者ですが、一定期間の入札参加禁止または自粛もなく本事業を受注したことについて、どのようなご検討またご判断をなされましたでしょうか。住民説明は充分になされ、不安は払しょくされたとお考えでしょうか。
②協議会への出席について
環境省主催で計4回開かれている「可燃性廃棄物減容化事業に係る協議会(仮設焼却施設運営協議会)」に、貴職は一度も出席されていないようですが、理由をお聞かせください。焼却炉を受け入れた責任者として同協議会に出席しないのは無責任であると言わざるを得ませんが、自らのご判断なのかそれとも環境省から出席を止められたのかどちらでしょうか。
③処理量との処理能力との相違について
本焼却炉で処理されるのは1日当たり7トンとされていますが、現場作業員によれば、本焼却炉の持つ処理能力は1日当り40数トン、24時間連続運転仕様であるとのことです。これを無視して焼却時間を大幅短縮し、毎日点火、消火を繰り返すという無駄で非効率な処理を行っているわけですが、なぜ焼却処理量に対し6倍もの大きさの施設を設置する必要があるのか確認されましたでしょうか。処理対象物総量は1,740トンであるとされ、これを本来の処理能力で計算するとわずか43.5日間で処理が終了することになりますが、これを1年かけて処理することで作業員を無駄に被ばくさせることになります。これについて環境省からどのように説明を受けておられますか。
④土砂災害危険区域での設置について
焼却炉の至近距離には土砂災害警戒区域・土石流危険渓流の立て看板が掲示されていますが、設置に問題はないのか、環境省からどのように説明を受けておられますか。協議会でも議事録に入っていないようですが、協議会および住民には説明されていますでしょうか。
⑤HPへの掲載について
貴村のHPに仮設焼却炉についての情報は見当たらないようですが何故でしょうか。爆発事故を起こした日立造船の焼却炉でもあり、一層の情報開示が求められるはずです。今からでもサイトを開設し、日々の維持管理データをきちんと掲載していただくのが受け入れ自治体としての説明責任ではないでしょうか。
引用ここまで( http://gomif.blog.fc2.com/blog-entry-239.html )
要約すると
① 鮫川村で事故を起こした日立造船がなぜ受注したのか?
② 遠藤村長はなぜ環境省主催の情報共有の場に一度も参加していないのか?
③ 焼却施設の処理能力が今回の焼却対象物の総量に対して6倍も高いのに、なぜ1年間も運転する必要があるのか?
④ 焼却処理施設の自然災害への危機管理体制及び、その対策はどうなっているのか?
⑤ 今回の焼却炉の情報を公開していないのはなぜか?
各質問は上記にまとめられよう。
過去に減容化施設においてどのような事態が生じているかしっかりと認識していて、想定外の事故とされた福島第一原発事故の教訓をしっかりと活かした計画で進めているのか。また、そのための村長自身の情報収集と住民への説明が十分と考えているのか。
を確認する内容だといえる。
確かに、前回の鮫川村の件を検討した際、事故の発生の多くが、安全・安心な減容化施設を運営できなかった、( もしくはその蓋然性が非常に低いまま運営を行った )日立造船が新たに運営を受託することになった、川内村の地域住民からしてみれば、今回の日立造船の運営は非常に不信感を頂くものである。
また、そのことがより村長自身の情報発信の在り方や受け入れの決断について疑義が生じるのも無理もない。
そして、2つ目の点も今後の放射性廃棄物焼却において、注意深い観察が必要な勘所である。
下記再度引用
放射性廃棄物は焼却せず一元管理が原則です。本来ならば東京電力第二原発へ収容されるべきであり、そこに収めきれない分は南いわき開閉所へ強固な保管庫を造って長期保管するべきではないでしょうか。第二原発は廃炉にすることを前提に再生可能エネルギーを推進していますが、なぜ廃炉にするとしている第二原発を利用しないのでしょうか。また被害者の代理であるはずの貴職がこれを求めないのでしょうか。
焼却炉から出る排ガスには微量であっても放射性物質が含まれ、吸引することで内部被ばくを引き起こします。お金に代えられる問題ではありません。
「田村、川内の廃棄物も処理するから」というのは根拠として筋が通りません。それら農業系副産物は原発事故さえなければ農家にとって大切な資材・財産だったものであり、一方的にこれらを汚染されて財産を侵害されたのですから、「自分の所で発生したゴミなのだから自分の所で処理しなければ」などという理屈は本末転倒で成り立ちません。
世界史上最悪の原発事故を起こした東京電力の責任として、放射能汚染物を引き取るのは当然の道理であり、「無主物」などというあまりに非常識な主張など認められるはずがありませんが、貴職はこれを認めたということなのでしょうか?だから「地元のゴミは地元で」などという荒唐無稽な発想が出てくるのではないでしょうか?
私達は原発事故を引き起こした罪を認めようとしない姿勢を決して容認するわけにはいきません。
改めて今回の判断について強く抗議するとともに、早急に説明を求めます。
引用ここまで( http://gomif.blog.fc2.com/blog-entry-239.html )
ポイントは、
・放射性廃棄物を減容化(焼却処理)する必要があるのか?
⇒燃やさないで東京電力の敷地に埋めろ
・そもそも原発事故が起きなければ今回の農林業系廃棄物は全て農家の財産だったはず。財産権を侵害されたのに、その処分における負担を侵害された自治体が被るのは理解ならない。
⇒東京電力が全て負担しろ
・原発事故を引き起こした罪を認めようとしない姿勢がムカつく。
⇒東京電力しっかり謝罪して全部対応しろ
そもそも村長は被害者の代表もしくは( 代理 )なのだから、これら住民の意見をしっかりと伝えろよ。
といったところでしょうか。
これらは今後の放射性廃棄物の減容化及び、処分に関して非常に難しい点である。
つまり、実際に民家の軒先にある放射性廃棄物( 農林業系廃棄物 )の処分をいかに早期に進めて、児童や若者の外部被爆の機会を低減していこうかといった建設的な議論よりも、その対応に係る責任追及にのみ焦点が当てられ、議論が全く進まなくなるのである。
確かに、福島第一原発事故が起きなければ生まれなかった農林業系廃棄物の処分問題に対して、誰がその責任を取るのか、また、誰の負担でその処分を進めていくのかといった議論は大いに展開されるべきではある。
しかし、震災後4年経ってもその責任の所在は不明瞭なままであるのとともに、果たして東京電力のみが咎められるべきなのか、といった点は私個人の意見としては非常に懐疑的である。
というのも、確かに福島第一原子力発電所は東京電力が運営責任を持ち、関東圏への電力供給を行っていたとの点で、地元福島の住民には必要のないものであり、その恩恵を受けていた東京都民や東京電飾そのものが責任を取るべきとの論が展開されるのは理解できる。
しかし、果たしてそうだろうか。
高度経済成長に乗り遅れた福島県の近代化促進のための地域雇用の創生や産業振興に大いに貢献してきたのではないだろうか。
福島県によると、昭和49年( 1974年 )に制度化された“電源三法交付金”に基づく福島県の交付実績は平成25年( 2013年 )までの40年間の間に、累計で約3,169億円の交付が実施され、そのうち、電源立地地域対策交付金( 原子力発電施設等周辺地域交付金相当部分 )23%の約729億円が福島県の原子力発電所が存在することによって得た国からの交付金ということになる。
( http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/life/145402_301097_misc.pdf )
また、そのほかにも東京電力の地元経済への雇用創出貢献及び、職員等の行き来による地元飲食店や宿泊施設への貢献を含めると年間20億円程度のキャッシュが福島県に原子力発電所があることによって生み出されていたと推計することができる。
また、電源立地地域対策交付金の平成25年度実績で
川内村…59,726,408円
田村市…50,563,501円
更には、昭和49年度から平成25年度の累積実績では、
川内村…1,062,511,000円
田村市…455,000,000円
上記の交付金を受け取っている。
また、震災前の平成21年度の川内村の一般会計決算状況を見てみると、
( http://www.kawauchimura.jp/outline/account/account21_1.html )
川内村の歳入…2,970,000,000円( 約29億7千万円 )
うち自主財源…719,786,000円( 約7億2千万円 )
うち依存財源…2,254,583,000円( 約22億5千万円 )
上記の通り、自主財源の歳費における構成比率が24%程度で、地方交付税交付金や福島県及び国庫の支出金等の依存なしに自治体運営がままならない状態であった。
必ずしも電源立地地域対策交付金が全てとは言い切れないが、こうした状況下において、これまで原子力発電所が存在することによる恩恵を地元は全く受けておらず、勝手に設置して事故を引き起こした東京電力の責任だと匙を投げてしまっては、今後の川内村、福島県及び、日本の復興へ向けた建設的な議論及び、実施は進展していかない。
川内村の遠藤村長への質問状を拝読する限り、「全ての責任は東京電力にあり、我々は被害者である」との意識が強く打ち出されているように感じる。
これまで福島県に原子力発電所があることによって地元自治体が恩恵を受けてきたことは自明の事実であり、建設及び運転を容認してきた地元自治体の民意を今更否定することはできない。
そのため、福島県の対策地域内及び、その他近隣自治体は、今ある放射性廃棄物の処理の問題を次世代に残さず、どうやったらこの問題を解決していくことができるのかをノーサイドで話し合うことを望みたい。
日立造船運営の鮫川村仮設焼却炉事故とは何だったのか
2013年8月29日(木)いつものように8時ごろ、傾斜式回転床炉の運転準備を開始した。
8時3分…排風機の運転を開始。
8時10分…バーナーに着火
9時ごろ…焼却対象物( 牧草60%、稲わら40% )を投入し、定格( 毎時190Kg )を目指して焼却を開始。
その後、14時過ぎまで約1tを焼却した。
14時33分ごろ…主灰コンベア付近で大きな異常音( パンという大きな破裂音 )が発生した。その後、直ちに着火バーナー、二次バーナーの燃料を停止。
14時36分ごろ…作業員が現場を確認中に二回目の異常音( 1回目よりは小さな音 )が発生。
14時37分ごろ…原料供給を停止。順次停止ボタンを押し、運転停止操作に移行。
14時45分…現場運転事務所( 日立造船 )から日立造船株式会社本社へ第一報を連絡。
14時50分…現場運転事務所から環境省に第一報を連絡。
14時50分…鮫川村から環境省及び、現場運転事務所に事実関係の問い合わせ。
15時10分~…環境省本省が、鮫川村、北茨城市、いわき市、塙町、福島県産業廃棄物課、福島県県南地方振興局、環境省福島再生事務所に第一報を連絡。
15時53分…排風機が停止し、プログラム通り、順次停止を完了。
16時30分~…現場運転事務所長が近隣の住宅4戸に電話し、つながった3個に対して事故の状況を説明。
19時ごろ…環境省本省で記者発表を行うとともに、鮫川村、いわき市、北茨城市、塙町、福島県産業廃棄物課、福島県県南地方振興局に記者発表資料を送信。
20時20分~…現場運転事務所長と環境省福島再生事務所員が近隣の住宅11戸を訪問し、事故の状況とお詫びを内容とする説明資料を配布。
20時30分…棚倉消防署から環境省本省に事実関係の問い合わせ。
20時43分…環境省本省から棚倉消防署に記者発表資料をファックスで送信。
21時…環境省本省から棚倉警察署に連絡。
21時23分…環境省本省から棚倉警察署に記者発表資料をファックスで送信。
※警察署、消防署には緊急対応連絡網に基づき、現場運転事務所から連絡する体制であったが、連絡がされなかったために環境省本省が対応した。
環境省が2014年9月10日に公表された環境省がまとめた資料によると、上記の時系列がうかがえる。
( http://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_fukushima/specified_waste/pdf/samegawa_130925_01_01.pdf )
上記の事故はのちに山本太郎参議院議員等の開示請求を通じて、説明の矛盾点が露見されることになるが。
さて、今回の事故の論点は3つあると考える。
① 事故を引き起こした原因は何なのか
② 危機管理体制及び、情報伝達経路はどのように設計されていたのか
③ 責任所在はどこにあるのか
まず、事故を引き起こした原因は何か。
環境省の報告によると、原因は
① 焼却炉の下部にあるプラグの隙間から可燃物を含む灰が主灰コンベアにこぼれ落ち、
② 主灰コンベア内や主灰サイロ内でくすぶって一酸化炭素を主体とする可燃性ガスが発生し、
③ 閉鎖空間であった主灰コンベア内や主灰サイロ内に滞留して可燃限界濃度に達し、
④ 焼却炉からこぼれ落ちた灰が火種となって着火し、一気に異常燃焼し、
⑤ 主灰コンベア内の圧力上昇を招き、破損・変形に至ったものと推定されます。
上記の設備構造上や運転管理体制にも問題があったとしながらも、一貫して
“人為的なミス”
を原因として主張している。
つまり鮫川村での事故は通常起こりえない、もしくは想定しえない人為的なミスが生じたために起きてしまった事故だと結論付けているに他ならない。
しかし、こうした人為的なミスは全く想定しえなかったのだろうか。
ポイントは、日立造船が提案し、環境省が認めた「傾斜回転床炉」にある。
この「傾斜回転床炉」は、愛知県春日井市に建設された産業廃棄物処理施設がよく引き合いに出される。
2004年に愛知県が設置を許可し、名城産業株式会社( 愛知県名古屋市 )が2007年から運転した同施設は、排ガスや異臭が基準値を超えたとして2度の改善命令を出すも、改善が行われず2010年8月に地域住民の念願叶い、操業が断念された。
これまでに全国で「傾斜回転床炉」の運用事例の実績はほとんどない。
では、そうした運用実績の少ない焼却炉形式を選択したプラントメーカーは運営体制上どのような危機管理体制及び、情報伝達経路を事前に準備していたのか。
運用実績が少ないということは、不測の事態が経験則として蓄積されていないことを意味する。
つまるところ、施設運営における熟練工がいないため、「不測の事態」や「万が一の際」のリスクマネジメントを想定することができないのである。
ましてや、放射性廃棄物の処理ともなると、万が一の際のリスクは更に高まることは容易に想定さる。
また、2011年11月8日には東京都国立市の株式会社リストの運営する産業廃棄物処理施設で大規模火災が発生したのも「傾斜回転床炉」の焼却炉である。
1995年に宮崎県延岡市の有限会社オイルリサイクルが運営する焼却施設と、2006年に愛知県喜多郡内子町の有限会社坂本材木店の焼却施設に設置された「傾斜回転床炉」は事故こそは起きていないものの、喜多郡の施設は既に廃止されている。
私が確認できた範囲で、鮫川村の仮設焼却施設建設以前には、国内で4例しか存在しなかった「傾斜回転床炉」をどのようにリスクマネジメントすることができたであろう。
さらに言えば、今回の運営を行った日立造船はこれまでに国内での運用実績は1例も存在しない。
また、環境省の取りまとめを確認しても「危機管理」といった観点から疑問が生じる。
何故、現場運転事務所は爆発が起こった際に、地元警察署及び消防署に通報を行わず、環境省に連絡を入れたのかである。
緊急対応連絡網に基づくと、現場運転事務所が連絡を行うフローになっているとのことだが、何らかしらの意図が働いたのではないかと勘繰りたくなる。
現場の日立造船の責任者及びスタッフは地元の鮫川村ではなく、「東京( = 環境省 )」に向いていたのではないだろうか。
事故発生後の環境省本省に第一報が入ってから約5時間40分後に地元の棚倉消防署への説明を準備するには十分な時間があった。
当日の16時30分から近隣の住宅に連絡を行ったとしているが、万が一の際を考えると、日立造船本社や環境省への報告より前に地元住民の安全を確保することが優先されるのではないか。
さて、こうして出揃った情報をもとに検討すると、鮫川村での事故は起こるべくして起こった事故であると結論付けることができるのではないか。
つまり、国内の運用実績がほとんどない「傾斜回転床炉」を用いた仮設焼却施設の運用は「安全運転」を保証するには程遠い経験によって裏打ちされたプラントメーカーによって運営されたために、「予期せぬ人為的なミス」が発生し、事故が起きた。ということである。
何故、これまで運用実績のない「傾斜回転床炉」を提案したかについては推測の域を出ないが、プラントメーカーの裏側で何かしらの思惑が生じていたに違いない。
もちろんのこと、この提案を認めた環境省も同様に責めに帰すべきである。
しかし、一番の責任は、運営を行った日立造船であることは疑いの余地がない。
では、この事態を受けて我々は今後の廃棄物処理を検討するにあたって、どの点を考慮すべきなのであろうか。
それは、
“安全運転が行えない焼却炉形式、プラントメーカーを選択しない。”
ことである。
放射能濃度は経時減衰する? 30年後の試算から現状を認識する
前回7月24日取り上げた、除去土壌に関する件とは別に7月21日の検討会で公表された資料には、「放射能濃度毎の経時変化」といったグラフが記載されていた。( https://josen.env.go.jp/chukanchozou/facility/effort/investigative_commission/pdf/proceedings_150721_07.pdf )
まず、「除去土壌などの発生量推計」では、
① 8,000Bq/kg以下の土壌など…約1,006万㎥
② 8,000Bq/kg超 10万Bq/kg以下の土壌など…約1,035万㎥
③ 10万Bq/kg超の土壌など…約1万㎥
④ 除染廃棄物の焼却灰…155万㎥
⑤ 10万Bq/kg超の対策地域内廃棄物など…2万㎥
と分類されている。
※この土壌“など”のなどには、先日RADIEX2015にて、大迫政浩氏( 国立研究開発法人国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センター長 )が取り上げていた「2,000万㎥以上になるとみられる土壌や廃棄物」として指摘していた、その他農業系廃棄物も含まれるものと考えられる。
また、「放射能ごとの経時変化」において、今後30年で8,000Bq/kg~10万Bq/kg以下の除去土壌量のうち4割ほどが8,000Bq/kg以下に減衰されるとしている。
環境省の公式HPでは、“平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により、放射性セシウム等の放射性物質が放出されました。放射性物質汚染対処特措法では、廃棄物の事故由来放射性物質による汚染の状況調査等の対象は、セシウム134及びセシウム137に限るとされています。”とあり、“セシウム134、セシウム137の半減期はそれぞれ約2年、約30年”と半減期について明記されている。
また、その他放射性物質としては、“セシウム134、セシウム137以外にも、ヨウ素131、ストロンチウム90、プルトニウムなど”があるが、“平成23年に文部科学省が行った調査結果では、「プルトニウム、ストロンチウムの沈着量の最高値が検出された箇所において、仮に、50年間滞在した場合に生じる、土壌からの再浮遊に由来する吸入被ばく、及び土壌からの外部被ばく線量の積算値(以下、「50 年間積算実効線量」と言う。)について、IAEA が提案している緊急事態時の被ばく評価方法に基づき計算したところ、セシウム134やセシウム137の沈着量の最高値が検出された箇所における50年間積算実効線量と比べて、非常に小さいことが確認された。”ことによって、“今後の被ばく線量評価や除染対策においては、セシウム134、セシウム137の沈着量に着目していくことが適切であると考える。”と結論付けている。( http://shiteihaiki.env.go.jp/faq/ )
このことから、環境省は放射性廃棄物に附着している「放射性物質」は、セシウム134とセシウム137を対象にし、7月21日に環境省が公表した資料のグラフを読み取ってみたい。
まず、セシウム134とセシウム137の半減期がそれぞれ約2年と約30年とされているため、
セシウム134…α = β( 1/2 )^n/2
セシウム137…α = β( 1/2 )^n/30
α = n年後の放射能濃度
β = 評価時点の放射能濃度
また、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構福島開発部門のデータに基づくと事故発生直後のセシウム134とセシウム137の放射能の割合はほぼ1:1であったと報告している。( http://fukushima.jaea.go.jp/initiatives/cat01/pdf05/02-Appendix3-2.pdf )
そのため、仮に発生直後10万Bq/kgの放射能濃度の廃棄物が存在し、かつそれぞれが1:1の割合で含まれていた場合の減衰は以下のようになる。
「評価時点」が2011年3月と仮定した場合、自然に現在2015年7月時点で約56,00Bq/kgまで減衰していることになる。
7月21日に公表された資料の中で「評価時点」は明確ではないが、2011年3月に仮定した場合、8,000Bq/kg~10万Bq/kgの放射能濃度の廃棄物のうち30年後に8,000Bq/kg以下に減衰するためには、発生当時の2011年の時点で、32,000Bq/kg以下でないと減衰しないことになる。
つまり、6割以上がその時点で32,000Bq/kg超の放射能濃度を有していたことになる。
また、その当時100,000Bq/kgの放射能濃度がある廃棄物は8,000Bq/kg以下になるには、80年の歳月が必要となる。
あるいは、今回の環境省が公表した資料の「評価時点」が2014年であった場合、セシウム134は半減期を経過しセシウム137の放射能能割合は約1:2の比となる。
この場合、8,000Bq/kg~10万Bq/kgの放射能濃度の廃棄物のうち30年後に8,000Bq/kg以下に減衰するためには、2014年の時点で、24,000Bq/kg以下でないと減衰しないことになり、100,000Bq/kgの放射能濃度がある廃棄物が8,000Bq/kg以下になるには、93年後の2116年と試算される。
現存する放射性廃棄物を、人体に影響がなくなる程度まで放射能濃度を減衰させるには、数十年といった歳月が必要となる。
そのため、できる限り放射能濃度を抑える形での減容化手法を講じることが必要不可欠と結論付けることができるのではないか。
以前にも触れたが、熱処理における減容化手法は焼却方式によって、放射能濃度の濃縮率が異なる。
現在価値のコスト認識や価値観で放射性廃棄物の処理方法を決定するのではなく、我が国の未来を考えた上での廃棄物処理の在り方について検討することを強く要望したい。
※参考で
2011年3月時点で100,000Bq/kgの放射能濃度を有していた場合の減衰推移図
“除去土壌”とは? 汚れた土の再利用よりも、汚れが落ちるまでに着目せよ
7月21日(火)環境省は“中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会”なる会を立ち上げた。
( http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150721/k10010161211000.html )
インターネット上では、
“こうやってじわっとじわっと日本全土をごみ処理場にしていくつもりなんだね。”
とした声もあがり、汚染土壌の再生利用に関する批判が多く見られたが、環境省が公表している資料の中で、気になるものがある。それは、“除去土壌”という表現だ。
環境省公表の“除去土壌の保管に係るガイドライン”( 2013年5月:http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/josen-gl04_ver2.pdf )では、“福島第一原子力発電所の事故に伴い放出された放射性物質の除染作業によって除去された土壌”のことを「除去土壌」と定義している。
放射性廃棄物が付着しているこれらの土を減容化し、除染したのちに再利用することを検討し始めた。
利用先として白羽の矢が立ったのは、
① 工作物の埋戻し
② 土木構造物の裏込め、
③ 道路用盛土
④ 河川築堤
⑤ 宅地造成
⑥ 公園・緑地造成
⑦ 水面埋立
⑧ 建築物の埋戻し、
⑨ 鉄道盛土
⑩ 空港盛土
上記10の用途だ。
また、これらに活用するための正当性を担保するためのものとして、
・発生土利用基準…国土交通省通達( 平成18年8月10日 )
・建設発生土利用技術マニュアル…土木研究センター( 平成25年12月 )
これら2つの基準と照らし合わせて検討した。
確かに一見、上述の情報を搔い摘んだニュースを受け取ると、「福島県の原発事故によって放出された放射能に汚染された土を日本全国にばらまく気か!」と憤慨したくもなる。
しかし、今回の検討会の中で注目すべき点は別にある。
① 「除去土壌」という「単語」を用いて放射性廃棄物の枠から汚染された土を追い出していること。
② 「放射能濃度ごとの経時変化」の表をもとに計算すると8,000~100,000 bq / kgの放射性廃棄物のうち、6割が50,000bq / kgの廃棄物であること。
である。
まず今回は、「除去土壌」の処分方法に関して検討したい。
環境省の除去土壌の処理フロー( https://josen.env.go.jp/chukanchozou/action/acceptance_request/pdf/draft_131214.pdf )をもとに依然用いた図をもとに図解してみると下記の通りとなる。
つまり、結局のところ、仮置場というフロー以外は、通常の特定廃棄物( 放射性廃棄物 )と同様の対象物であると考えられる。
また、こうした言葉のあやを用いて、放射性廃棄物を管理型処分場、中間貯蔵施設や最終処分場ではなく、その他一般廃棄物と同様の処分場もしくは再利用を実施しようと検討しているのは、ひとえに処分場の不足が懸念されているからに他ならない。
やはり、処分施設の確保はこの先も困難であるとの見通しが変わらないと容易に推察される。
確かに、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」( http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO137.html )第二条において、“この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。”とし、汚泥のように水分が多く含まれていない、土は廃棄物の定義の中からは外れてしまうのかもしれない。
また、一般的に廃棄物と聞くと不要になった家具や家電製品等を連想するのではないだろうか。
しかし、法律上の「廃棄物」の定義に必ずしも当てはまるものではないことを理由にして、
土 ≠ 廃棄物
の構図をとっても根本的な課題解決に至らないといえるのではないか。
では、どうしたらよいのか。
除去土壌も指定廃棄物( 放射性廃棄物 )の一部としてとらえることで、適切な処分フロー及び、減容化の手法を検討し、放射性濃度が科学的に人体に影響がない程度まで引き下げることができることを立証し、かつ、それらを丁寧に説明することを継続することによって、再利用時の安心・安全の訴求を目指すべきである。
というのも、「除去土壌」と一見わかりにくい表現を用いることで、放射性廃棄物を日本全土に巻き散らかすのではないかと国民は不信感を抱き、円滑な指定廃棄物処理の進行を阻害する要因になりかねないからである。
また、今回の検討会の中にも、こうした「除去土壌」の減容化技術に関して、
① 分級処理
放射性セシウムが付着している土壌の成分を、超音波やジェット水流、スクラビングフローテーション、ナノバブル( マイクロバブル )等の手法によって分離する処理方法。
② 化学処理
放射性セシウムが付着している土壌を酸溶液( シュウ酸、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸 等 )あるいは、アルカリ溶液( 水酸化ナトリウム 等 )を用いて溶媒する手法、もしくは、フェロシアン化鉄( プルシアンブルー )、ゼオライト、ケイチタン酸塩の吸着剤を用いて分離する処理手法。
③ 熱処理
放射性セシウムが付着している土壌を、融点以上まで加熱しセシウムを揮発させさせる溶融と、融点より低い温度で加熱しセシウムを揮発させる焼成、あるいは、反応促進剤( 塩化カルシウム、炭化カルシウム、二酸化ケイ素 等 )を用いて揮発分離させる処理手法。
3つの処理技術による検証が公表された。
また、これらの手法を比較すると、
実証結果に基づくと、
① 除染率が一番高いのは「熱処理」…最大99.8%の除染が可能( 最低でも94% )
② 処理コストが一番安いのは「分級処理」…平均1tあたり1.2万円で処理が可能( 最大でも3万円 / 1t )
それぞれの処理方法において、上記の優位性がうかがえる。
また、暫定的ではあるが、減容化技術によって除去土壌から放射性セシウムが高い割合で除染可能といえる結果が公表された。
将来にわたり上記処理手法よりも有効な手法が突如として現れる可能性もある。
しかし、放射性物質の除去においては、採算度外視とまではいかないが、ある程度のコストが生じることは致し方のないこととした場合、優位性の②を排除し、実証結果から検討すると、この除去土壌の処理において、「熱処理」による減容化手法が現状では最善の策と結論付けられるのではないだろうか。
また、「熱処理」にコスト優位性がないのであれば、規模の経済性を生かし、1tあたりの処理コストを低減することで国民の負担を低減し、さらには、除染率が高いために安心を提供することができるのではないかと考える。
さらに、この「除去土壌」再利用に関する課題は、上記に問題点として指摘した通り、「除去土壌」と銘打って土を放射性廃棄物以外の物として扱うのではなく、福島第一原子力発電所の事故によって生じた放射性廃棄物の一部として、正面からその処理の在り方について検討する姿勢が必要なのではないか。
※次回は問題点②の「「放射能濃度ごとの経時変化」の表をもとに計算すると8,000~100,000 bq / kgの放射性廃棄物のうち、6割が50,000bq / kgの廃棄物であること。」について検討したい。
濃縮率から今後の廃棄物処理を検討せよ
何度か「濃縮率」という単語が登場している。
環境省のガイドラインによると「災害廃棄物の焼却処理に関する評価」において「災害廃棄物を焼却した際に発生する飛灰中の放射性濃度の算定方法」がある。
その算定式は、
“飛灰中の放射性濃度 = 災害廃棄物の放射性濃度α × 飛灰への濃縮率β”
とある。
もともとの災害廃棄物の放射線濃度に対して、
・ストーカ式…33.3倍( 仮定 )
・流動床式…16.7倍( 仮定 )
上記の環境省が仮定している濃縮率をもとに、災害廃棄物の放射性濃度の階層別に分類すると、
① ~8,000 bq / kg ⇒ 一般廃棄物
② 8,000~100,000 bq/ kg ⇒ 管理型処分場
③ 100,000 bq / kg~ ⇒ 最終処分場( 中間貯蔵施設 )
前回の処分場建設の困難さやコスト面を鑑みると、
① ⇒ ② ⇒ ③
上記の優先順位で、処分が可能な方法を模索する必要があるのではないか。
そのためには「 飛灰中の放射性濃度 」をできる限り抑えた焼却方式が必要となる。
また、上記の図から、限界や上記の処分ルート別にカテゴライズした場合、環境省が仮定している限界濃縮率をもとにすると、
■ストーカ式
①に分別できるα値の範囲…0~240 bq / kg
②に分別できるα値の範囲…241~3,003 bq / kg
③に分別されるα値の範囲…3,004~ bq / kg
■流動床式
①に分別できるα値の範囲…1~479 bq / kg
②に分別できるα値の範囲…480~5,988 bq / kg
③に分別されるα値の範囲…5,989~ bq / kg
したがって、①及び②に分別可能なα値の範囲は
流動床式 > ストーカ式
上記の結果となる。
確かに、流動床式の焼却炉は比較的大きな廃棄物を焼却するには向いていないため、その場に応じて焼却方式を検討する必要はある。
しかし、将来的な管理型処分場、中間貯蔵施設及び、最終処分場の施設の確保を考えると、できる限り流動床式で廃棄物を処理したほうがよいといえるのではないか。
RADIEX2015で語られた減容化の重要性
現在、都内で開催されている「RADIEX2015 環境放射能対策・廃棄物処理国際展」( https://www.radiex.jp/ )は、放射能に関連する技術進歩に関する展示会である。
今年の開催趣旨には、“中間貯蔵施設の建設を中心とした「廃棄物処理ゾーン」に力点を置き、安全と復興に不可欠なものである環境保全へのソリューションも併せて提示してまいります。”( https://www.radiex.jp/syushi/index.html )と明記されており、福島の放射性廃棄物の処理に関してフォーカスしている。
期間:2015年7月15日~17日
場所:東京 科学技術館
主催:環境新聞社
仕事の合間を縫って参加した15日の午後講演では、大迫政浩氏(国立研究開発法人国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センター センター長)は、
「減容化」が今後の放射性廃棄物処理において非常に重要なファクターと主張した。
■減容化( げんようか )
目的:放射性廃棄物の容積を減らし、中間貯蔵施設や最終処分場により多くの廃棄物を処理すること。
手段:焼却、溶融、
これは、放射性廃棄物の処理方法のプロセスの大枠を理解しないことには始まらないため、下記の図を参考にされたい。
一般的に放射性廃棄物は、
1 収集、運搬
2 分別(可燃物、不燃物)
3-1 可燃物は焼却( 減容化 )
3-2 不燃物は管理型処分場もしくは中間貯蔵施設
4-1 8,000bq / 1kg以下の廃棄物は一般の廃棄物処分場に搬送(一部は管理型処分場)
4-2 8,000~100,000bq / 1kgの廃棄物は管理型処分場に搬送
4-3 100,000bq / 1kg以上の廃棄物は最終処分場に搬送
上記のプロセスをたどる。
しかし、今、問題となっているのが、中間貯蔵施設と最終的な搬送先( 管理型処分場と最終処分場 )の場所の確保である。
7月6日付の福島民報( https://www.minpo.jp/news/detail/2015070423869 )によると、福島県双葉郡広野町に建設した仮設焼却炉施設から排出される焼却灰を一時保管している施設が満杯となり、当初の計画通りに平成29年に解体する予定が延期になりそうだと、環境省福島再生事務所が説明した。
また、同事務所はその要因を、中間貯蔵施設と管理型処分場の施設が地元住民の理解を得られないために進んでいないことだとしている。
つまり、ごみは燃やしたけど捨てる場所がないということだ。
通常、可燃性廃棄物を減容化( 焼却 )すると容積は10分の1程度に減るらしい。
放射性廃棄物の場合は、その放射能の濃度によって処分先が異なるため、減容化後の放射線量が非常に重要なポイントとなる。
たとえば、100tの放射性廃棄物を減容化した際に10tの灰が排出されたとする。
ケース①
10tのうち
・10tすべてが100,000bq / 1kg 中間貯蔵施設⇒最終処分場
ケース②
10tのうち、
・5tが100,000bq / 1kg…中間貯蔵施設⇒最終処分場
・5tが8,000bq~100,000 / 1kg…管理型処分場
ケース③
10tのうち、
・5tが8,000bq~100,000 / 1kg…管理型処分場
・5tが8,000bq / 1kg未満…一般の廃棄物処理場
ケース④
10tのうち、
・10tが8,000bq / 1kg未満…一般の廃棄物処理場
中間貯蔵施設と最終処分場、管理型処分場の施設の建設には、地権者との交渉や地元住民との交渉に莫大なコストと時間を要する。
講演した大迫氏によると、福島県内の除染土壌等の廃棄物は約1,600万~2,000万㎥残存しているとされ、東京ドーム約15個分の処分場が必要になり、約3兆円のコストが発生する見込みとの試算を発表した。
また、建設にかかるコストは
最終処分場 >> 管理型処分場 > 一般の処分場
であり、かつ最終処分場やその手前の中間貯蔵施設は放射線量の高い廃棄物を配置するため、地元住民からの反対意見は根強く、十分な施設の確保が遅れ、事故後の復興へ向けた対応に遅れが生じることは大いに想定される。
では、どうしたらいいのか。
減容化後の放射線量の濃度をできるだけ低くすることで(具体的には100,000bq / 1kg超の廃棄物の量を減らすことで)、最終処分場の以外の場所での処分が可能な灰の量を相対的に増加させ、廃棄物処理を進めていくことが求められる。
その際に重要なことが、減容化後に排出される、「主灰」と「飛灰」における「濃縮率」である。
焼却炉の比較とこれまでの実績
実際に指定廃棄物を減容化するにあたって、「焼却」といった方法が用いられる。焼却とは言っても、福島県内の指定廃棄物の焼却のために建設された事例を調べてみると
- ストーカ式…ストーカ炉
- 流動床式…流動床炉
- 傾斜回転床式…傾斜回転床炉
- ガス化溶融式…シャフト炉
上記の4つの型式の焼却炉がこれまでに震災後、福島県内に建設されている。
各プラントメーカーの意向によって焼却炉の方式が異なるとかはよくある話だが、具体的にそれぞれがどのようなケースにおいて採用されてきたのだろうか。
また、どうして異なる手段( 炉形式 )が選ばれてきたのか。
私が収集した情報をまとめると、下記の通り。
※表現は全て環境省公式HPの表現に統一
■仮設焼却炉の建設/実証試験焼却炉の建設( 福島県内 )
( https://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_fukushima/waste_disposal/iitate/processing_komiya.html )
着工時期:平成25年11月~
焼却炉型式:流動床式( 流動床炉 )
主要焼却廃棄物:家の片付けごみ
管轄:環境省
②福島県富岡町処理施設
( https://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_fukushima/waste_disposal/tomioka/processing_tomioka.html )
時期:平成26年3月~
焼却炉型式:ストーカ式( ストーカ炉 )
管轄:環境省
( https://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_fukushima/waste_disposal/kawauchi/processing_kawauchi.html )
時期:平成26年3月~
焼却炉型式:ストーカ式 ( ストーカ炉 )
主要焼却廃棄物:被災家屋解体物、家の片付けごみ
管轄:環境省
( https://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_fukushima/specified_waste/purge_center.html )
時期:平成24年12月~
焼却炉型式:流動床式( 流動床炉 )
主要焼却廃棄物:下水汚泥
管轄:福島県
( http://www.env.go.jp/jishin/waste/daiko_hirono.html )
時期:平成26年3月~
焼却炉型式:ガス化溶融式( シャフト炉 )
主要焼却廃棄物:被災家屋解体物
⑥飯館村蕨平地区
時期:平成26年3月~
焼却炉型式:流動床式( 流動床炉 )
管轄:環境省
( https://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_fukushima/waste_disposal/katsurao/processing_katsurao.html )
時期:平成26年5月~
焼却炉型式:ストーカ式( ストーカ炉 )
主要焼却廃棄物:被災家屋解体物、家の片付けごみ
管轄:環境省
時期:平成26年5月~
焼却炉型式:ストーカ式( ストーカ炉 )
管轄:環境省
( https://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_fukushima/waste_disposal/namie/pdf/namie_h27_02.pdf )
時期:平成26年7月~
焼却炉型式:ストーカ式( ストーカ炉 )
管轄:環境省
⑩福島県南相馬市処理施設2( クリーン原町・雫浄化センター )
( http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/10,1676,59,200,html )
時期:平成27年1月~
焼却炉型式:ストーカ式( ストーカ炉 )
主要焼却廃棄物:非公開
( https://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_fukushima/specified_waste/samegawa.html )
時期:平成27年1月~
焼却炉型式:傾斜回転床式( 傾斜回転床炉 )
主要焼却廃棄物:農林業系廃棄物
上記既に建設が行われている11の焼却施設のうち、実に半数以上の6施設がストーカ式の仮設焼却施設を建設している。
廃棄物処理において、ストーカ炉にはそれなりの優位性があるといえるのだろうか。
それぞれの焼却方式、及び優位性を検証していく必要がある。
全11施設を表でまとめると下記で表現できる。
そもそも、焼却炉の型式が異なる理由はその焼却方法そのものに違いがあるからに違いない。これまでの施設の建設実績を鑑みると、
■大きな廃棄物…ストーカ式、ガス化溶融式に優位性がある。
■水分量が多い廃棄物…流動床式、傾斜回転床式に優位性がある。
環境省及び各地方自治体が選定した焼却炉形式において、上記の違いが確認できる。
確かにこれまでの福島県内における除染作業や、指定廃棄物の多くは、建物のがれきや、倒壊した家の残骸、宙に浮いた車体のイメージがあるため、ストーカ式の焼却炉が活躍するのも納得できる。
また、それに続いて、下水処理場に蓄積される汚泥や、居住制限区域や避難区域の農林業が断絶されたために排出される農林業系廃棄物が得意な流動床式の焼却炉が次点であるのも必然ではないか。
つまり、その焼却炉は焼却する対象ごとに選定されており、それぞれの目的に適った形式の焼却炉が必要となってくる。
しかし、それぞれの焼却炉形式には重要な違いが存在する。
放射性物質を焼却した際の「濃縮率」の問題である。
< 用語 >
■津波廃棄物
津波等に伴い発生した廃棄物(木材、廃タイヤ、廃プラスチック、未処理の漁網等)
■家屋解体廃棄物
震災により被害を受けた家屋の解体に伴い発生する廃棄物(木材、廃プラスチック、畳、プラスチック製浴槽等)
■片付けごみ
家の片付け等により発生する廃棄物(可燃ごみ、可燃性粗大ごみ、木材、草木類、園芸資材、冷蔵庫等)
■除染廃棄物
除染作業に伴い発生する可燃性廃棄物。(剪定枝、落葉、芝、苔、雑草、リター層、伐採木等)
■下水汚泥
下水処理場において発生する下水汚泥。脱水汚泥のほか、実証事業等により発生する乾燥汚
泥を含む。(脱水汚泥、乾燥汚泥)
■農林業系廃棄物
稲わら、牧草、堆肥、果樹剪定枝、バーク、ほだ木、菌床等